八雲学園中学校高等学校
ひとりの生徒を個別の先生が見守るチューター方式

東京目黒区に位置する八雲学園中学校高等学校では、総合力をつけるために、「英語教育」「進路指導」「マナー教育」そして「チューター方式」を教育の軸としています。クラス担任とは別に、生徒一人ひとりに“チューター”と呼ばれる先生が個別につき、勉強や学校生活の悩み、友達関係の相談などに対応するという「チューター方式」。深い信頼関係を築き、不安を解消して安心感を生むことから、同校の教育を支える大きな強みとなっている「チューター方式」について、中学部長の横山先生に取材しました。
悩みがあったら相談できる先生がいつもいる

――最近は多くの学校が採用しているチューター方式を、八雲学園では21年前に教員がチューターという形で始められていますね。

横山先生:本校は創立から78年目の学校です。教育方針は「生命主義」「健康主義」。自分の命はもちろん周りの命も大事にしようという方針で始まりました。当初は中高ありましたが東京都から高校の人数を増やしてほしいという要望があり、中学は途中で休校になったのです。しかし、もともと6カ年でやりたかったことや少子化に伴い、21年前に中高一貫校になりました。その時にチューター方式も取り入れました。

――八雲学園のチューター方式は、一人の生徒にチューターの先生が1人付くそうですが、この形を採用された理由は?

横山先生:前校長が精神科の医師で、当初からカウンセリングの先生が常駐している学校でした。また、チューター方式がなかった時期も先生と生徒の仲が良く、この先生に話に行こうという生徒で職員室がいっぱいだったのです。
ただ、カウンセラーは守秘義務があるため、生徒から何か相談された時に、「先生には言わないで」と言われると、担任-にも親にも話をしません。でも、そういう生徒は深いところまで悩んでしまっています。そこで、カウンセラーより前に我々教員でできることをやっていこうと、このチューター方式がスタートしました。中学が再開した当時は1クラス38名でしたが、一人ひとりに担任以外にも先生が付いて、話を聞こうということになったんです。生徒たちは、悩みがあったら相談できる先生のところにやってきます。もちろん何もなければ来ません。ただ、相談できる先生がいるという安心感はあると思います。

――生徒はチューターの先生を選べるのですか。

横山先生:中1はまだ先生のことがよくわからないと思うので、最初は生徒の様子を見てチューターを決めていきます。中2からは希望を聞きます。ただしチューターは、教科担当の場合はありますが、自分のクラスの生徒は絶対に受け持ちません。通常は各学年の各クラスで数名ずつを受け持ちます。そうすると「このクラスで今何が起きているか」が、だいたいわかるのです。「クラスがいつもうるさい」とか「友達の元気がなくて、悪口を言われているらしい」などの情報も集まり、最終的には周囲から指摘されている生徒のチューターの先生に伝えて、話ができるよう持っていきます。特に中1、中2あたりまでは、細かい問題が起こりがちですし、テストの計画表をチューターに見せて指導を仰ぐようにしたりして、何も相談がなくても年に11回は必ずチューターとの接点があります。

 
問題が起こる可能性があるときに
チューターがフォローできなければ意味がない

――最近のいじめ問題などを見ていると、親や先生に言えなかったり、言う機会がなかったりする子供が多いように思いますが、そういうフォローができるわけですか。

横山先生:自分では言えない生徒もやはりいますが、周りから状況がわかると解決のきっかけがつかめます。チューターには守秘義務はありませんので、生徒から「親には言わないで」と言われたことでも、深刻な場合は保護者に「お子さんには言わないでください」と言って話をします。保護者は子供の悩みがわかり、それに学校も対応していることがわかれば安心されます。

――生徒側と保護者の安心感や信頼感が、チューター方式が長く続いてきた理由のひとつでしょうか。

横山先生:そうですね。何も問題のない生徒は、勉強も自分でやるし、友達とも仲良くやっていて、面談しても元気にやっている様子で1~2分で終わります。それが通常なので、それはそれでいいわけです。

――悩みや問題があった時に相談に行ける人がいることが大切なんですね。

横山先生:我々チューターは、生徒に自分の携帯電話の番号や自宅の電話番号も教えます。日曜日でも夏休みなどの長期休暇でも、部活もあるし何か問題が起こる可能性はあると思いますから、そういう時にチューターがフォローできなければ意味がないと考えています。ただ、メールでのやり取りはやめています。文章になると、自分の思い以上のことを書いてしまったり、内に抱え込みがちな生徒は余計にこもりがちになったりするので、必ず電話にして勘違いが起こらないように心がけています。

――それは、先生方も大変ですね。

横山先生:私がチューターを受け持っていた生徒で、朝の6時半くらいに「友達に悪口を言われて喧嘩になり学校に行きたくない」という電話がかかってきたことがありました。それで学校で9時に待ち合わせをして、別の部屋で1時間ほど話をしました。その後教室に戻ると言ったので戻らせて、6時間目が終わってからまた話を聞いてみたんです。すると「向こうも冗談で言ったみたいで誤解でした」と元通り元気になっていました。その対処は1日置いてしまうといろいろ複雑になってくるので、できるだけ早く対応することを大事にしています。

勉強の相談が1位
文理選択もチューターの先生に

――相談は友達関係が多いのですか。

横山先生:一番多いのは勉強ですね。日曜日に生徒から電話がかかってきたこともありました。翌日から中間試験だったのですが、「わからない問題がある」ということでしたが、電話で教えるのも難しいし、私も休み気分になってしまっていたということはありましたね(笑)。あとでしっかりとフォローしました。

――中2からは生徒の要望に応えるとのことですが、チューターの先生の変更は多いのですか。

横山先生:中2、中3は生徒たちにはアンケートを取りますから、チューターを変えることができます。一番変えられるのは男性教員ですね(笑)。やはり中2、中3くらいになると女性の方が話しやすいようで、女性教員に変更されることが多いです。英語が得意じゃないから英語の先生がいいと、教科で変える生徒もいます。保護者からの希望があれば、それに合わせた教員に変更することもあります。

――3年間そのままということも?

横山先生:ありますね。半分ほどの生徒は3年間同じ先生です。いろんな先生と話したいということで、毎年チューターを変える生徒もいます。

 
生徒へのきめ細かなフォローと安心感を
大事にしていきたい

――担任の先生とチューターの先生の連携は、かなり密にとられているのですか。

横山先生:そうですね。本校では高1で文理が分かれるので、中3での最終的な面談は、担任とも行いますがチューターとも行います。もともと文系か理系かの希望は聞いていますが、最近の点数などを見ながら相談して、文理を変える生徒もいますね。それをチューターの先生から担任の先生へ報告することもあります。担任とは「School Diary」という日々の生活や学習を振り返るノートで、それぞれの生徒とまた別のやり取りをしています。

――全体的な学校生活は担任の先生が見て、細かなところをチューターの先生が見るという体制でしょうか。

横山先生:中学生はきめ細かく見ますが、高校生になると逆に自分で解決していく力も養っていかないといけません。中学では保護者会が年に3回あり、担任との面談も年に3回ありますが、高校になると保護者会が年に1回、担任との面談も基本的には年に1回になります。学年に合わせて対応は変わっていきます。

――先生と生徒の関係が近いだけに、生徒同士の関係も近いですか。

横山先生:チューター方式が始まるのは5月ですが、実は入学したばかりの4月が一番大事な時期なので、入学式の翌日から中1のクラスには4名ずつの高3生が指導員で入ります。朝も少し早めに来てもらって、1年生が来たら1時間目の用意をさせます。昼休みになるとお弁当を持って1年生の教室で一緒に食べます。担任の先生もいますが、最初は先生には話をしにくいところもあると思うので、高3生にならよく話もするようです。輪に入れないような生徒に気づくと、担任の先生に報告して、担任も特に心を配るようにしますし、清掃の仕方も、終礼の伝達事項や帰りの身支度、机をきれいにして帰るところまで高3に教えてもらっています。5月の連休前に終わるのですが、最終日には泣いている中1の生徒もいますね。

――チューターの先生に加え、先輩もいるわけですね。

横山先生:校長からよく「みんな先生をやりたくて、やっているんでしょう」と言われます(笑)。先生としてできることは生徒たちにやってあげたいんですね。最初にチューターを作った時の保護者会でも校長は、「お母さんは24時間体制で子供さんといます。我々はそこまでできませんが、12時間は一緒にいます」と言いました。1日がかりでお子さんを育てていくために、我々もできるだけのことはやりたいという思いからチューター方式が続いています。

――チューター方式は今後も八雲学園の軸ですね。

横山先生:そうですね。本校は900名くらいの学校で、クラブだけではない縦の関わりや教員との関係が深いことがとてもいいなと思います。また本校は、極端な話、正月期間以外はずっと学校を開放しています。クラブがあれば来てもいいし、先生がいれば残って勉強しても構いません。学校で過ごしていれば保護者も安心しますし、生徒たちが学校に残って何かをやるというのはとてもいいことだと思っています。これからも、生徒へのきめ細かなフォローと安心感を大事にしていきたいですね。

 

試験前に時間を取って相談しています!!

村山さん:私はいつも試験前にチューターの先生に時間を取ってもらっています。成績やテストの相談などもできるので、試験前にわからないところを相談したり、不明点があったりしたときもそのままにせずに聞いてもらえるのがいいと思います。他にも私はアメリカに語学留学したいので、その相談をしたこともあります。八雲学園では中1の時に高3の先輩が指導員として来て下さって、先輩のおかげで友達もできたし仲良くなれたことが良かったです。

 

文理選択など大事なことを相談できるのが心強い!

古川さん:チューターの先生には試験前に面談してもらえるのですが、試験前は傾向を相談して、試験後は結果を振り返りながら相談に乗ってもらっています。試験のポイントを教えてもられるので参考にして勉強にも取り組みやすいです。高校に入る前は文理選択など大事なことがあるので、そういう話もチューターの先生にできることが心強いですね。それ以外の生活面や友達関係もたまに相談しています。八雲学園は先輩・後輩の関係も、先生との関係も近く、安心で、学校が楽しいです。

 
SCHOOL DATA
八雲学園中学校高等学校
〒152-0023 東京都目黒区八雲2-14-1
http://www.yakumo.ac.jp/
 

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