恵泉女学園中学・高等学校
写真で解説!メディアセンター

4階までの吹き抜けの1階部分、HR教室24室分の広大なスペースを占める恵泉女学園中学・高等学校メディアセンター。新校舎と共に2003年に完成し、2015年以降はリニューアルを行いながら、様々な情報を発信し、より生徒が読書や学習と深く関われる場として進化しています。
中央にガジュマルの木が植えられた館内には、約9万冊(開架7万冊)の蔵書だけでなく、学習室とコンピュータ室が各2部屋、放送室、学園史料室があります。学習室を含めた座席数は220席以上で、読書や自習、調べ学習、グループ学習も可能です。本に親しみ、学びの可能性を広げる恵泉女学園中学・高等学校のメディアセンターを紹介します。

 

<右>山﨑清子先生 <左>金(コン)美智子先生
いろいろな考えを知り、
そこから自分でどう考えを深めていくかが大事

貴校では「考える恵泉」として「思考力」「発信力」の育成に力を入れていますが、その方針はメディアセンターと深い関わりがあると思います。 メディアセンターでは、どういったことを大切にされていますか。

金先生

本校では、社会科や園芸科などで学校図書館の資料を活用した調べ学習が以前から行われてきています。 急速に変化する社会を生きる生徒達には、課題 を見つけ、問いを立て、情報を探し、それをもとに思考し、自分の考えを発信する力が求められています。ただ資料を調べることが大切なのでは なく、そこに思考が伴っているかが重要です。メディアセンターの機能を最大限に活用し、中学高校の6年間を見通した探究型学習をより効果的に行えるよう、 力を注いでいきたいと思います。

山﨑先生

正しく判断して考え、発信していくためには、精度の高い情報を選び取る必要があります。「調べる=ネットで検索」と思っている人が今は多いですが、インターネットの情報は玉石混交です。そのため、低学年のうちはまず本を使って調べることを大切にしています。そのうえで、両者の特性を意識させながらインターネットを併用していきます。両方を使って上手に調べるにはどうしたら良いかを司書教諭が関わって指導しています。

 

充実した図書館ですが、司書教諭としてこのメディアセンターの魅力を、どこに感じられますか

山﨑先生

たくさん本があるので、様々な要望をもった生徒に対して応えられるかなと思います。生徒の関心はいろいろな方向に向いていますから、これだけの蔵書があることで、より多くの選択肢を用意できると思います。また考えるということも、自分で考えるだけでは広がりませんが、自分以外のいろいろな考えを知り、そこからどう考えを深めていくかが大事だと思うので、その意味ではいろいろなひっかかりが見つかるところが魅力だと思います。

金先生

広くて管理や運営が大変な部分もありますが、その分利用目的に応じたゾーン分けが可能なので、そのときの気分や目的に応じて生徒が好きな場所を選べるところが魅力だと思います。ちょっとリラックスしたいというときは、ブラウジングコーナーで雑誌を見たり、カウンターで雑談してもいいですし、集中して勉強したいときにはキャレルデスクや学習室などを使うことができます。

 

生徒が好きな場所を選び、したいことに向き合えるメディアセンター
「ここで過ごす時間が楽しい」
「有意義だ」という図書館体験を

図書委員会は、どういう活動をされているのですか。

山﨑先生

図書委員は、各クラス2名で、全校では60名です。
全員で関わるのは、本の紹介をしている「鍵」という冊子の発行です。そのほかに広報誌「ガジュマル」を年1回発行しています。また出入口の壁面装飾の制作のほか、講演会、選書ツアーも年1回行っています。
夏には不要な本を集めて販売をする「古本市」を行います。集まったお金はカンボジアの子どもたちに本を届 けるプロジェクトに献金を続けているのに加え、東日本大震災や熊本地震の被災者の方たちのためにも何かしたいということで、移動図書館プロジェクトや学校図書館への支援も行っています。

 

図書委員会の発行物「鍵」

図書委員会はかなり活発に活動されているんですね。

山﨑先生

以前は前後期で分かれて活動していましたが、昨年から通年で活動する委員会になりました。それによってそれぞれの企画にじっくり取り組むことができるようになり、また、新しい企画も実施しやすくなりました。今はクラスとメディアセンターをつなげるような働きかけに取り組んでいます。

 

恵泉女学園メディアセンターの大きな取り組みとして「読書ノート」がありますが、推薦図書の中からどの学年も「ノンフィクション」を読むことになっています。これはどうしてですか。

金先生

生徒が自分で選ぶとどうしても物語が多くなるので、ノンフィクションをもっと読んでほしい、そして社会に目を向けてほしい、将来のことを考えてもらいたいということで、ノンフィクションを入れています。読書ノートに紹介している冊数も多く、1年生で必ず2冊、2年生だと必ず4冊、3年生は最低でも2冊を読むことになっています。

 

中学生対象の読書ノート。学年別の推薦図書が紹介されている。

資料には「卒業後も本を読む人であり続けるために読書教育を」と書かれていましたが、イメージされている読書教育とは?

山﨑先生

良い本に出会い、そのとき求めていたこと、あるいは何かステキなことや大切なことを本から得られたら、きっとまた本を開くと思います。何か良いことを知ったりうれしいことがあったりすると誰かと共有したくなる人も多いと思うので、本を介して人とのつながりも広がっていくと思います。両方の経験を重ねる機会を作れたらと、考えています。

金先生

学校図書館には、卒業しても公共の図書館を活用して学び続ける生涯学習者を育てるという役割もあると思います。「ここで過ごす時間が楽しかった」「有意義だった」という図書館体験をすることで、ただ本を読むだけではなく、必要な情報があったときに図書館を活用して読んだり、調べたりして考える人になってくれるのではないかと思います。

 

その意味でも、中高時代に読書をすることの大切さを感じられますか。

金先生

自分が何者か模索しているような、子どもと大人の間のような中高生のときに、いろいろな物語やノンフィクションを読むことによって、自分がどう生きていきたいか、どんな社会で生きていきたいかを考えていくことができます。それが本などの情報に触れる大切さだと思うのです。教室での学びも大切ですが、様々な人の様々な考えに自由に触れられる環境として、学校図書館を有効活用して読書をしてほしいです。

山﨑先生

人は言葉で他者と理解し合うので、読書によってその引き出しを増やすことが力になります。また、現代の子どもたちはいろいろな情報を得ることに慣れていますが、その分字幕と音声付きの映像のような、想像しなくても得られる情報に偏りがちだと思うので、想像力を育むことはとても大切だと思います。映像や音などの手がかりのない、文字だけからが一番膨想像をふくらませることのできる幅が広いと思うのです。言葉の力というものを感じてもらえると、変わっていくと思います。

 

最後に、先生方のお薦めの本の紹介をお願いできますでしょうか。

山﨑先生

読書ノートでも推薦している『オオカミ族の少年』(ミシェル・ペイヴァー著/評論社)です。「クロニクル 千古の闇」というシリーズの1巻なのですが、紀元前六千年の物語ということで、ファンタジーではありますが、本当にそうだったのかもしれないと思える世界が描かれています。見たことのない世界を想像しながら楽しめる、本に没頭する体験ができる本だと思います。

金先生

私も2年生の読書ノートに載せている『気分はもう、裁判長』(北尾トロ著/イースト・プレス)です。タイトルの通り、裁判の傍聴記ということでいろいろな民事裁判を傍聴して、それを親しみがわくようなトーンで紹介しています。裁判が傍聴できるということを知らない生徒もたくさんいますし、すごく硬いもの、無味乾燥なものと思っている人も多いと思うのですが、これを読むことで、裁判が人間味あふれるものだということが伝わるのではないかと思います。

 

金先生推薦の『気分はもう、裁判長』<左>、山﨑先生推薦の『オオカミ族の少年』<右>
 

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で