駒場東邦中学校・高等学校
自主独立の精神を遂行する行政委員会

駒場東邦中学校・高等学校 自分たちが学校に影響を及ぼせる。大変だけどやってみたいと思えた行政委員会

「自主独立の気概と科学的精神で次代のリーダーとなれ」という指針を掲げる駒場東邦中学校・高等学校。生徒たちは駒東生になったその日から、あらゆる場面でその精神を鍛えていきますが、そんな生徒を代表して企画を立て、行動し、実践していくのが、生徒会活動である行政委員会です。駒場東邦で受け継がれる自主独立の気概とはどのようなものなのか? 行政委員会の面々から、そのスピリッツを探ります。
名倉くん[高校2年・行政委員長]泉山くん[高校2年・高校行政副委員長]津村くん[中学3年・中学行政副委員長]
名倉くん[高校2年・行政委員長]
泉山くん[高校2年・高校行政副委員長]
津村くん[中学3年・中学行政副委員長]
駒場東邦生徒会組織図
駒場東邦生徒会組織図

生徒を後方支援!企画立案、実行が行政委員会の仕事

駒場東邦では、中高一体となった生徒会の中に行政委員会、生徒議会がありますが、どういう役割分担ですか。

【 名倉くん 】行政委員会が立案した企画について議論する場が生徒議会です。
行政委員会は現在19人で、委員長、副委員長が2人、会計が2人、広報が2人、書記が2人、体育部の部長が1人、文化部の部長が1人、同好会の会長が1人、庶務が6人、経営活動部の部長が1人。その中に中学生は2人です。全員が立候補ではなく、選挙で選ばれた委員長と副委員長が、本人とも相談して任命します。
行政委員会は、生徒の後方支援が仕事で、生徒を見えないところからから支えていけるような企画やプロジェクトを立案し実行していきます。行政委員長と副委員長が立候補する時に、まずマニフェストを掲げ、そのマニフェストの達成を軸に、1年間活動していきます。

マニフェストは、立候補時に1人ひとつ掲げるのですか。

【 名倉くん 】行政委員長と高校行政副委員長の2人がペアになって立候補することが校則で決まっているので、2人で考えたマニフェストを4~5つほど掲げました。中学の行政副委員長は1人なので、1人で3つぐらい考えます。

名倉くんが行政委員長に立候補した理由は?

【 名倉くん 】僕が立候補した理由には先輩への憧れがありました。中学2年の時に行政委員長をしていた先輩が硬式テニス部の先輩で、行事で司会をしたり生徒の前で発言したりする姿がとてもかっこよく、自分も先輩のように学校を良くするために何かしたいと思ったんです。
立候補には副委員長が必要だったので、これまでの学校生活でとても信頼できる人であり、中学2年から仲が良かった泉山くんを誘いました。

【 泉山くん 】僕は誘われるまで行政委員会なんて考えてもいませんでしたが、誘われてみて思いを巡らせた時におもしろそうだなと。自分たちが学校に何かしらの影響を及ぼせるわけで、大変そうだけどやってみたいと思ったんです。

名倉くんと泉山くんが、行政委員長、高校行政副委員長に立候補時配布したチラシ。マニフェストをしっかりと明記して、生徒たちに投票をアピールした

名倉くんと泉山くんが、行政委員長、高校行政副委員長に立候補時配布したチラシ。マニフェストをしっかりと明記して、生徒たちに投票をアピールした。

同じ生徒である僕たちが話を聞いて、悩みを解決できる手助けができないか

2人のマニフェストはどのような内容だったのですか。

【 名倉くん 】まず1つ目が、居残り届の廃止です。
居残り届を出すと17時半まで部活ができて18時に最終下校となるのですが、昼休みまでに先生に提出しなければならず、先生がいなければ出すことができないし、最近では口頭にしている部活もあったので、それなら廃止してもいいのではないかと思ったことがきっかけです。

2つ目は、照明の設置です。
照明は2005年くらいから伝統のように引き継がれてきたマニフェストで、冬になると校庭が暗くて部活をする時に危険なのです。事故を防ぐためにも照明をつけてもいいのではないかと思いました。ただ、長年の懸案事項であり、先生方でも話し合いが行われていたようで、交渉する前に照明がつきました(笑)。

3つ目が、目安箱の有効活用です。
校内に生徒が抱えている悩みや企画などを入れる目安箱が置かれていて、それを行政委員会が確認しますが、実際には返答をするわけでもなく、実現もされていなかったんです。それはもったいないと思って、目安箱の有効活用をマニフェストに掲げました。

4つ目は、お悩み相談所の開設です。
僕が一番やりたかったことがこれで、生徒が抱える悩みを相談する相手は先生が多いと思うのですが、ちょっとした悩みだと先生に話すのがはばかられます。そういう時に同じ生徒である僕たちが話を聞いて、悩みを解決できる手助けができればいいなと思ったんです。

5つ目は、行政委員会の内容開示です。
行政委員会が何をやっているかの認識が低かったのですが、生徒の後方支援をしているわけですから、なるべく自分たちがやっていることをみんなにわかりやすく知らせたいと思って、マニフェストに掲げました。

【 泉山くん 】立候補までの学校生活で、こういうところを直した方がいいのではないか?と思ったことを素直にマニフェストに入れていけば、多くの生徒に共感をしてもらえるのではないかと話し合いました。

名倉くんと泉山くんが、マニフェストに掲げた照明の設置。長年の行政委員会の願いが実を結び、設置された。

名倉くんと泉山くんが、マニフェストに掲げた照明の設置。長年の行政委員会の願いが実を結び、設置された。

とても具体的ですね。中学副委員長である津村くんの立候補の理由とマニフェストは?

【 津村くん 】中学に入学して「ここをもっとこうしたらいいな。どうしたら実現できるんだろう?」と思ったことがいくつかあった時に、生徒手帳で行政委員会の選挙をやっていることを知ったことが立候補のきっかけです。
マニフェストは、砂取りマットの活用です。僕は中学1年の頃に喘息を持っていたのですが、初めての体育祭では校庭が砂煙で真白になるくらいの状況で、息苦しくなってしまいました。男子校としてはかっこいいですが、そういうところをきれいにできたら、よりこの学校が格好良くなると思ったんです。それで、砂取りマットの増設と有効活用を考えました。中学生でも実現できそうなことにこだわりました。

津村くんがマニフェストに掲げた砂取りマット。校内の設置場所や枚数も調査して、適所に設置され活用されている。

津村くんがマニフェストに掲げた砂取りマット。校内の設置場所や枚数も調査して、適所に設置され活用されている。

マニフェストの実現の厳しさに直面 本当に悔しい!

去年の1月に今期の行政委員会が発足して、いろいろ実現のために活動してきたと思いますが、実現できたことや苦労があれば教えてください。

【 泉山くん 】まず実現できたことは会報の発行です。全校生徒に向けて、今期の行政委員会が何を行ったか、目安箱にどんな意見が入っていてどういう対応をしたかを紹介しました。

名倉くんと泉山くんのマニフェストから実現した「行政委員会会報」。行政委員会の仕事報告やマニフェストの進捗状況のほか、目安箱の訴状にもていねいに回答。

名倉くんと泉山くんのマニフェストから実現した「行政委員会会報」。行政委員会の仕事報告やマニフェストの進捗状況のほか、目安箱の訴状にもていねいに回答。

【 名倉くん 】泉山くんと僕が一番力を入れたのは、お悩み相談所の開設でした。生徒同士同じ目線で悩みを聞いて解決の手伝いをしたかったのですが、悩みにもいろいろな深刻さがあるため、生徒だけで悩みを聞く危険性を指摘されてしまい、何度も案を出しましたが、今のところ承認されていません。一番力を入れていたマニフェストだけに本当に悔しいです。
でも、このまま任期を終えるわけにもいかないので、代替案として11月にコミュニケーション講座を開きました。部活が入れ替わり時期なので、後輩からの悩みに先輩はどういう対応をすればいいのか、コミュニケーションが得意ではない人はどう対応すればいいのかなどのテーマで実施しました。

生徒の後方支援を実現するためには、学校や先生と交渉をする難しさがあるわけですね。

【 名倉くん 】そうですね。やはり生徒に任せられる範囲があります。お悩み相談所は、先生も関わることができるならという話が出たのですが、それは僕らが考えていたお悩み相談所の意図から外れてしまうと思ったんです。そこが難しいところです。
今回は「ピアサポート」(同じような立場の人によるサポート)を大切にしたかったんです。僕ら3人もピアサポート講座を受けて、相手とどのように関わっていくか、相手からの話の聞き方などを学びました。

【 泉山くん 】難しさでは、行政委員会のメンバーには部活をやっている人もいて、全員揃って会議ができないなど、スケジュールの調整は難しかったです。体育祭や活躍した部活の壮行会や報告会の司会など、行政委員会としての仕事が年間でいろいろあり、それらと並行しながらマニフェストを実現していく難しさもありました。

自分で考えて、とことん追求できる それが駒場東邦

そのような行政委員会の活動の中で感じたやりがいは何でしたか。

【 泉山くん 】何をどう書けばいいのかわからないところからスタートした会報が全校生徒に配られ、行政委員会の活動を共有してもらえたことは嬉しかったですね。後輩からも反響がありました。

【 名倉くん 】行政委員長として生徒の前で話す場がいろいろあり、その時は緊張もしますが、全校生徒に向けて発信できることにやりがいを感じました。

【 津村くん 】僕は、自分のこうなればいいのにということが実現できたことにやりがいを感じました。先輩方がいろんなことを実現しようと努力している姿を見ていて、強い意志を感じましたし、そこから見習うところもたくさんありました。

名倉くんと泉山くんのマニフェストから実現した「行政委員会会報」。行政委員会の仕事報告やマニフェストの進捗状況のほか、目安箱の訴状にもていねいに回答。

行政委員長として全員を引っ張る名倉くんと、副委員長として支える泉山くん。中学生の津村くんはそんな先輩たちの姿を見ながら自分もマニフェスト実現に励んできた。

行政委員会での経験を通して駒場東邦の「自主独立」の精神を理解し、成長できたこともあるかと思いますが。

【 名倉くん 】行政委員長になってみんなを引っ張ってきたということでは、責任能力が成長したかなと思います。
ただ、部活も勉強もあってかなり忙しく、実は夏休みに体を壊して入院してしまったんです。その時に自分の体の弱さを知りました。バランスを取って両立しながらうまく進めることの難しさも感じました。

【 泉山くん 】行政委員会で計画して実行してということを1年間繰り返してきたので、そういう力は今後に役立つのかなと思っています。自分は仕事をためてしまうことが多く、追い込まれないとやらない自分の弱点も見えたので、そういう気づきはいい経験でした。

【 津村くん 】僕自身、やりたいことをやるという人なので、自主独立の精神は大事だなと思っています。なんでも経験してみたいので、その意味では初めての行政委員会で資料作りやマニフェストの実現などでいろんなことが学べました。

行政委員会が活動する生徒会室前にて。

行政委員会が活動する生徒会室前にて。

駒場東邦で学んできて、「自主独立」を重んじる学校だと実感するところはありますか。

【 津村くん 】生徒がのびのびと過ごしている学校ではあると思います。行政委員会もそうですが、僕が所属している化学部でも自主的に研究を行っています。いろんなところで、自分で考えて、とことん追求できる学校が、駒場東邦です。

【 名倉くん 】僕が所属している硬式テニス部では、伝統的に一番上の学年の人たちが部活を仕切って、練習メニューもすべて自分たちで考えます。顧問の先生は生徒に一任し、それによって生徒に責任感が生まれます。そういうところでも自主独立の精神が育っているのではないかと思います。

【 泉山くん 】行政委員会も基本は僕たちが仕切り、やることを決めて、それを実行していきます。先生の承認は必要ですが、自主性は尊重されていると思います。

行政委員会での経験を、将来にどう活かしたいですか。

【 名倉くん 】具体化の仕方はまだイメージできていませんが、行政委員長は全員が経験できるものではないので、貴重な財産になると思います。また、将来どんな職業についたとしても、この経験は何かしら生きてくるのではないかと思います。

【 泉山くん 】僕もまだ何をするかは分かりませんが、将来社会に出たら、仕事を計画して実行していくことになると思うので、行政委員会で経験した報告や交渉などの小さな社会経験を活かしたいと思います。

【 津村くん 】僕は医者を志しているのですが、医者に求められるのは現場でのリーダー性や現場を俯瞰する力で、そういう部分は行政委員会でかなり鍛えられたので活かしたいと思っています。

From Teacher’s Message 野口昌志先生[数学科教諭/生徒会主任]
From Teacher’s Message
野口昌志先生[数学科教諭/生徒会主任]
彼らの話にもあった通り、どうすればマニフェストを実現できるかをしっかりと考えた上で、進めてくれているなと思います。
委員長、副委員長は、「こうしたらもっとよくなる」という思いがあって立候補をして当選しているわけですが、結論だけを見てしまってそこへ到るプロセスは見えていないままに取り組んで頓挫してしまうこともあります。
今回、彼らが考えたお悩み相談所は、かなり細かいところまで考えて何度も議論してきましたが、難しいところがあって意見が割れてしまい、うまく実現に至っていません。そんな中でも彼らは、できる範囲をよく考えた上で議論を十分にして、あきらめずに教員に提案を持ってきてくれています。
今の段階まで進んだということが、実現したいという意志を持って進めてきた結果だと思います。

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