啓明学園中学校高等学校
グローバル環境で世界をつなぐ教育

啓明学園中学校高等学校
自然に恵まれた約3万坪の敷地に、幼稚園児から高校生までが集う啓明学園。1940年の創立当初から帰国子女の教育に注力していた同校では、世間でグローバル教育や国際教育が騒がれる前から、異文化交流を大切にした世界をつなぐ教育を行ってきました。啓明学園が目指すのは「Peacemaker(平和を築く人)」の育成。一歩先を行く独自の教育と魅力について、「来てもらえれば、良さが必ずわかります」と熱く語られる先生方に取材しました。
国際教育センター主任 関根真理先生[左]、 広報センター主任 荒木 栄先生[右]

個性を育てて伸ばすための教育

 
国際生の時間割はオーダーメイド
一人ひとりのために万全フォロー


関根先生
創立当初、帰国子女のための学校だった本校では、海外で学んできた言語や文化を貴重な宝として大切にしつつ日本の文化も知ったうえで、一人ひとりの個性を育て伸ばしていこうという創立者の理念があります。現在も、例えばスペイン語圏からの帰国生がいればスペイン語の授業を、中国語を母国語とする生徒がいれば中国語の授業を実施します。これまで学んできた言語を維持、伸長していくという考えですね。これは他校にない学びだと思います。

国際生一人ひとりの時間割。生徒によって、集団授業に出席する科目や個人授業を受ける科目がある。

荒木先生
国際生は随時編入が可能です。世界情勢によって帰国来日時期は一定ではありませんから、事前相談に来ていただいて状況を確認し、いつでも試験を受けられるような体制を取っています。
本校では1つのホームルームクラスの中に留学生や帰国生といった国際生、日本で生まれ育った一般生がいます。そして国際生には一人ひとりに対応した時間割を用意します。例えば、英語は英語を母語として学んでいる生徒のクラスや一般のクラスなど、習熟度別に1学年で6クラスに分かれます。このフォロー体制はなかなか他にはないと思います。本校が積み上げてきたものですね。

 
世界の友と手をつなぎゆく
啓明学園の中にある国際社会

荒木先生
現在、本校の在校生は、約7割が一般生で、約3割が国際生です。学校生活の中では、言葉や文化の違いを受け入れることが当たり前。肌の色や自分の親が中国人でもアメリカ人でも関係なく、偏見を持つことがありません。1970年に制定された学園歌の3番に「世界の友と 手をつなぎゆく」とあるように、啓明学園の生徒たちは小さな国際社会が学校の中にあるという認識を持って育っていきます。

関根先生
休み時間は、日本語、英語、中国語、コリア語、スペイン語などいろいろな言葉が飛び交います。卒業生も「啓明ではいつも英語で話していたから、大学でも普通に話せる」とよく言いますね。特に一般生は国際生の発音に刺激を受けるようで、とてもきれいな発音をするようになります。
また、一般生の中では影響を受けて海外に行きたい気持ちが高まるようです。本校では中学2年から海外体験学習が可能で、姉妹校や交流校に通いながら世界とつながる貴重な体験を得ていきます。

 

世界をつなぐ人を作るための教育

世界に平和を築く
「Peacemaker」を育むプロジェクト
これまでの「国際理解の日」のパンフレット。テーマを反映した各表紙が個性にあふれる。

荒木先生
本校では世界について学び、世界のために行動する「Peacemaker」を育てることを目指していますので、中高の6年間を通して世界の問題や課題と向き合うプログラム「Peacemaker Project」に取り組みます。無理なく国際理解が深まっていく理由として、このプロジェクトの存在は大きいと思います。

「国際理解の日」。2017年度のテーマは「EU」。

関根先生
中学生は毎年3学期に「国際理解の日」という行事を行います。今年は16回目になります。世界や国家間の諸問題に絞った一つのテーマを調べ、最終的には各学年の代表が教育格差や人種格差の実状など平和をもたらさない問題点をかなり深いところまで調べて発表します。当日はテーマに関連した講師による、生徒とは別の視点からの講演やパフォーマンスによって理解を深めます。例えばテーマが「アメリカ」なら、横田基地の空軍バンドを招いて演奏を聴いてダンスを踊りました。そうした調べ学習だけではない、実物に触れる国際理解も大事にしています。

「国際理解の日」。プレゼンだけでなくパフォーマンスでも理解を深める。

高校3年間は、総合学習の時間に世界について学ぶカリキュラム「グローバルスタディーズ」が必修です。その中で問題発見力、論理的・批判的思考力などをつけるために、全員が世界にどのような問題があるかを知り、自分で課題を見つけ、それを調べて発表します。

 
世界を体験し、世界のために行動するプログラム
国際理解の授業

関根先生
海外体験学習は中学2年(希望者)から参加できます。夏にアイルランド、アメリカ、オーストラリアといった英語圏の国に行き、現地の姉妹校や交流校に通います。内容は本校の手作りで、日本文化を英語でプレゼン発表するプログラムでは、日本について自分も知る、そして相手にも英語で伝えるという交流を行います。 高校生になると、英語圏だけではなくカンボジアやドイツなど非英語圏に行くプログラムもあります。地域によっていろいろな文化があり、様々な違いに気づけます。

高校生対象のカンボジアワークキャンプ

また、3年前からカンボジア裁縫プロジェクト「Stitches for Riches」を始めました。これは、カンボジアの貧困の子供たちを学校に行かせるために、日本から布とキットを持って行き、現地でお母さんたちに縫ってもらい、それを日本で販売するというNPO団体のボランティア活動に参加協力するというものです。本校の生徒は、お母さんたちが作った袋やバッグに紐を通すなどの協力をしたうえでバザーで販売しています。この活動を通して実際にカンボジアを体験する「カンボジアワークキャンプ」も始めました。

「Stitches for Riches」で、生徒がタグ付けや紐を通して販売協力する

学ぶことは誰にでもできるのですが、実際に世界とつながる、行動するというところまでいかないと、ただ情報を集めただけで終わってしまいます。ボランティアで布地を提供してもきちんと縫う技術がなければ日本での販売につながりません。そういったことも含め、現地の諸問題や本当の意味での解決法を探ってそれを行動に移していくことは、生徒の深い学びになっていきます。この活動を初等学校や中学校に伝えていくということも、教育として大切にしています。

 

先を行くグローバル教育

 
どんな環境でもどこに置かれても
そこでPeacemakerになれる人に
初等学校の校舎入口にも「PEACEMAKERS」の文字が。

関根先生
世間一般に浸透してきた「グローバル」の意味は、本校と少し違っているように感じています。グローバルに活躍する人というと、エリートを作るようなイメージになっている気がしますが、本校での「グローバル」とは、どんな環境でもどこに置かれてもそこでPeacemakerになれる人ということです。
世界の平和を築くというと、紛争問題を中高生がどうやって扱うんだと言われますが、そうではなく、世界を見る前に自分たちの身近なところでできることをやってみて、そして世界で起きている問題を知り、自分は何をどうできるのかと考えて行動していくことが大事なのです。それは決して難しいことではなく、課題を見つけて行動することは誰にでもできます。それをつないでいきたいんですね。

校舎の壁にある歓迎の言葉も4か国。
 

荒木先生
本校の生徒たちは、違いを受け入れることができます。世界にはいろいろなケースがあり、いろんな環境があっておかしくない。その中で平和な世界をどう想像してどう協力して作っていけるかということなんですね。
海外、国内というような分け方ではなく、身近なところでも平和を築くという意識が大切です。世界における違いを受け入れることも大事ですが、自分が今置かれている状況や生活する環境で、どう平和を築くか。海外に行かないと考えられない、行動できないのではなく、今の生活で意識できることが素晴らしいんです。啓明学園の生徒たちは、海外に行かないとPeacemakerとして活動できないとは思っていません。

 
将来につなぐPeacemakerとしての精神

関根先生
本校では、創立当初から「平和を築く人を育てる」ことを大切にしてきました。学園の教育理念にも「平和を作る世界市民の育成」とあります。それは、どこに置かれても他者を思いやり受け入れることのできる人だと思っています。いろんな考え方があることを理解したうえで、プラスにするために建設的に話し合って、お互いに平和を築き合える人になれればいいと思います。
そこで私が大事にしたいと考えるのが「継続」です。いろんな学校がプロジェクトを立ち上げていますが、継続されないと支援したために現地の人が困ってしまう可能性もあって、それは無責任だと思うのです。生徒たちにもやると言った以上は継続しようと伝えています。だから、活動を後輩にも伝え、継続してくれる人を育てようとも言っています。次々に新しいことをやるよりも、責任を持ってやってほしいですね。

荒木先生
啓明学園は祈りのある学校なので、やはり「平和」に対しても他校とは少し考え方が変わってくると思います。紛争や災害に対しても、生徒たちは敏感です。その意味ではPeacemakerとして平和を作り出すことがいかに大切なのか、戦争がないことがどんなに素晴らしいことなのかというPeacemakerとしての精神を心に深く根付かせた本校の生徒たちが、それを将来につなげてくれると信じています。