國學院大學久我山中学校
自然体験教室での豊かな成長

國學院大學久我山中学校では、男子部・女子部が各学年で「自然体験教室」という宿泊行事に出かけます。自然の厳しさや美しさに触れながら、集団の中でのコミュニケーションや協力、思いやりや感謝の心を育む、他では得難い経験が詰まった伝統行事です。ココロコミュでは、信州での「自然体験教室」を終えたばかりの中学1年生に、成長を感じるリアルな声を聞くとともに、男子部・女子部の中学1年学年主任の先生方にも同教室の意味や価値を取材。体験を通して豊かに成長していく生徒たちの様子やその教育的効果を探りました。

 

自然体験教室

各学年で目標を設定して、男子部・女子部それぞれで行われる宿泊行事。「日本人の心」を柱に新しい時代に対応する教育を実践する同校らしい、日本の自然に親しみながら人としての心を育てる貴重な行事になっている。
中学1年は、長野県伊那市(旧・高遠町)のログハウスで3泊4日の集団生活。新しい友達と人間関係を築く第一歩の場となる。中学2年は、白根山、尾瀬で本格的な山登りの体験学習。自然の厳しさに挑み、あきらめない気持ちを学ぶ。中学3年は「自然体験教室」の集大成として北海道の中空知地区の農家で農作業体験、然別湖でカヌーやラフティングなどの自然体験を行い、自然との共生でその恵みや感謝する心を育てる。

コミュニケーションや助け合いが増えた!
KMさん[女子部・中学1年]
それまでの学校生活ではクラス内の仲の良い友達以外とは関わりが少なく、クラスや学年のまとまりもなかったように思いますが、「自然体験教室」ではいろんなクラスの人と話して遊べたので、一気に仲良くなれました。協力し合うことも多く、周りの人を今まで以上に知ることができたことはすごく良かったです。 その後の学校生活では、私が朝起きることや人とリズムを合わせることが苦手だと知った友達が、「早く用意した方がいいよ」とか「そろそろ準備して行こう」とアドバイスや声掛けをしてくれるようになりました。周りとのコミュニケーションや助け合いが「自然体験教室」を通して増えたと思います。
広がった友達の輪
SRさん[女子部・中学1年]
前は、同じクラスの子の名前もまだ覚えられていなくて、違うクラスの子の名前はほとんど知らなかったんです。でも、「自然体験教室」を通して友達の輪が広がって名前もわかるようになり、わからないことがあったときも周りに聞きやすくなりました。 オリエンテーリングでは、険しい斜面を登る場面で、つまずいて転んでしまった子がいたんですが、その子の後方に回ってに声をかけ、ペースが落ちたら背中を押してあげたり、支えてあげたりしたことで、人を助けることに積極的に行動できるようになった気がします。言葉で励ますだけではなく、実際に行動して人を助けることに意味があると気付けました。

左)オリエンテーリング 右)ハンドクラフトメニュー

相手のペースや性格を考えて声掛け
SSさん[女子部・中学1年]
最初は、みんながバラバラに行動していたので時間内に集合できず、「もっと早く行動するように」と先生から注意されていたんです。でも、声を掛け合うようになり、お互いに注意するようになって、次第に時間内に行動することができるようになりました。3泊4日の中で、クラスの子のそれぞれの性格などが見え、帰ってきてからの学校生活では相手のペースや性格を考えて声掛けができるようになっています。一緒にいろいろな行動をしたことが役に立っているなと思います。
生活の基本が身につき、生かせるようになった!
KMさん[女子部・中学1年]
宿舎がクラス混合で分けられ、夜の「キャンドルレク」も同じ宿舎でチームになってゲームに挑戦したんです。まとまって行動できないと勝てないため、他のクラスの人たちと協力し合って頑張りました。 その後の日常生活でも、他教室へ移動する場合はみんなに声を掛けたり、時間を守るために協力しています。「自然体験教室」を経験したことで、生活の基本が身につき、コミュニケーションの大切さがわかりました。

左)キャンドルレク 右)ログハウスでの男子の体操

協力して支え合えば最後まで乗り切れた!
SHさん[女子部・中学1年]
宿泊棟ごとにいろんなクラスの人がいて最初は慣れなかったのですが、お風呂に入ったり、ご飯を食べたりする中で声を掛け合って、少しずつ仲良くなれたところが良かったです。 山の中のポイントを順に歩いて、班別に点数を競いあうオリエンテーリングもあり、急な坂道が多くて大変でしたが、「なるべく多く点数をとろう」と気持ちを一つにして最後まで乗り切れたのは、協力して支え合ったからだと思います。
自分たちですべき行動を考えて、自分たちから行動する
KNくん[男子部・中学1年]
「自然体験教室」では先生から大まかな予定を伝えられるだけで、「何時何分に食堂に来るように」とか具体的なことは言われず、自分たちで考えて、話し合って、判断して、行動しなくてはいけなかったんです。先生に言われてから考えるのではなく、自分たちで先を考えて、行動するようになったことはとても良かったと思います。僕自身、それまで他人任せなところもありましたが、自分から行動することが少しはできるようになったと思います。
一緒にいたことで、仲良くなった人が増えた!
NTくん[男子部・中学1年]
「自然体験教室」は、一緒にいる時間が長く、話す機会がたくさんあって、仲良くなった人が増えました。同じクラスで席が遠い人や違うクラスで話したことがなかった人とも、「自然体験教室」をきっかけに仲良くなれたんです。学校でも挨拶をしたり、一緒に帰ったりすることが多くなりました。 「自然体験教室」では、話し合いや情報をみんなに伝え確認することの大切さに気付きました。小さなことでも話すことでわかることがあり、学校生活でもそれが生かせると思います。

左)オリエンテーリング 右)ハンドクラフトメニュー

 

コミュニケーションの大切さと
自分で考え行動することの意味を理解
中学1年の「自然体験教室」は、“集団生活”の基礎を学ぶというテーマがあるとのことですが、具体的にどういった目標があるのですか。
集団生活の基礎を学ぶことで、コミュニケーションの大切さと自分で考え行動することの意味を必然的に理解していきます。我々がまず生徒に求めるのは、「5分前の精神」です。何かが始まる5分前にはきちっと集合して、その活動に見合った準備を整え、静かに整列をして待っている状態。例えば、その前がフリー時間なら、「そろそろ動こうか」「何が要るかな?」と考えながら移動することを一人ひとりが考え、周りとコミュニケーションを取りながら5分前に整列できているようになることが狙いです。
入学したばかりの中1生に、5分前という余裕を持ち、周りと協力して行動するというのは、結構難しそうですね。
確かに彼らにとっては、とても大変なことです。ちょっと気を緩めると注意されて、良くなってきたと思ったらまた注意される。それを繰り返します。しかし、少しずつ徐々にハードルを上げていくと、彼らもそれに応えようとしてくれるんです。今年の中学1年生はとても素直で前向きに取り組んでくれたので、なかなか充実していたと思います。
女子部もアプローチの仕方は違いますが、目標は同じです。女子部の特徴としては、男子部はクラスごとにログハウス1棟を貸し切りますが、女子はログハウスをSTクラス2クラスと一般クラス1クラスの3クラスで4つ借りて、各クラスを解体します。STクラス、一般クラス関係なく、学年は「一つのチーム」と思っていますので、各クラスを超えたコミュニケーションを大切にしているんです。その中で、集合・解散の時間を守る、考えて行動するということをしっかりとさせました。
そうした「自然体験教室」での体験が、その後の学校生活に影響するわけですね。どういう時に実感されますか。
始業前です。8時20分が登校時間ですが、担任の先生がいてもいなくても、各クラス5分前には静かに読書をしています。もちろん何人か遅れてくる生徒はいますが、5分前にはほぼ揃っています。そういう姿を見ると、やはり「自然体験教室」の成果を感じます。
女子は、今までお互いに声を掛け合うことを遠慮していたところがありましたが、周りに注意を喚起しながら協力して動けるようになってきました。3泊4日ずっと一緒にいて、良いところも悪いところも見えただけに、その中でどうコミュニケーションを取ればいいか、何をすべきかがそれぞれ見えてきたようです。

中1の自然体験教室

不自由も窮屈も仲間と工夫しながら
楽しめる方向に変えていく力をつけてほしい
先生方が思われる「自然体験教室」の良さとは?
男子の場合はクラスごとに宿泊しますから、その後のクラスがしっかりしてくるんです。担任の先生のカラーと生徒たちのカラーで、どんなクラスになるのかがこの「自然体験教室」ではっきり見えてきますね。
「自然体験教室」は、テレビもない、スマホもない不自由な場ですから、「何もないという場所でどう楽しむか」という課題を示し、そのコツとして、「一人ひとりが小さい我慢を持ち寄ると意外と快適だ」と先に話しておいたんです。すると「我慢、我慢」と言いながら、短いお風呂の時間すら楽しんでくれて、不便な状況を仲間で楽しみに変えたところがたくましいなと思いました。 規律を重んじる学校ですから、時には学校生活が窮屈に感じることもあると思うんです。そういう不自由や窮屈を、仲間と工夫しながら楽しめる方向に変えて生活していく力をつけてほしいと思いますし、今回の「自然体験教室」を見て、彼女たちなら大丈夫かなとも思えました。その意味でも、中1でこの行事をやることは必要かと思います。
子供の柔軟性はすごいです。いろんな可能性があることが、「自然体験教室」でも垣間見えますね。
人間関係も、「自然体験教室」を終えたところで、良くも悪くも深くなってくるんです。最初はどのクラスも意識し合っているのか静かでしたが、「自然体験教室」が終わると活気も出てきて一皮むけます。今後はいろんな課題を解決しつつ、クラスの絆を太くしていかなければなりません。今まで以上の人間関係を作っていくためにどういうコミュニケーションを取っていくのか。それが、教員と生徒の次の課題になってきます。
クラスがまとまって人間関係が深まってくると、それまで見られなかった人間関係の小さなトラブルが出てきます。それは深まった故に出てくることです。最初の頃はお互いにいい子にしていたのが、何でも言い合うようになって、そこでまたコミュニケーションや協力などの学びができてきます。そこに我々教員も絡みながら、生徒とやっていく毎日です。
中2では本格的な登山体験、中3では農業体験をするんですね。先生方としてはこれからさまざまな体験を通して、どのように成長していってほしいと思われますか。
普段の教室での学びでは学べないことがたくさんあります。そこでの様々な経験を通して考えることで、人として大きくなってもらいたいですね。中学生はどんどん成長していく時期ですので、多くのことを知り、学び、知識が増える中で自然に触れる体験をするのは、貴重ではないかと思います。
「自然体験教室」の3回の経験は、普通ならしない経験を敢えてさせます。学校の企画だからこそ山を登るし、北海道でじゃがいもの選別をしたり牛の乳搾りをしたりする経験をします。そうした経験によって、自然の理解や農業への理解が深まり、もしかしたら農産物の研究をしてみようとか、農場に勤めてみようと言う生徒が出てこないとも限りません。また、普段の食を考える機会にもなります。将来を考えるうえでも中学でもっといろんなことを知り、経験値を積み、考える種をいっぱい持って、高校に進んでほしいなと思います。

左)中2の尾瀬での自然体験教室 右)中3の北海道での農作業体験

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