共立女子中学高等学校 地理歴史部
表現したいものを目指して時間も労力も惜しまない!鉄道ジオラマ模型の高校日本一は私たち

2017年の「全国高等学校鉄道模型コンテスト モジュール部門」で、参加142校中の第1位、最優秀賞となる文部科学大臣賞を受賞した共立女子中学高等学校の地理歴史部。モジュール部門とは、Nゲージの鉄道ジオラマを制作する部門で、作ったのは高校生の10名の部員たちです。構想やテーマを練り、モチーフとする現地に足を運んでフィールドワークを実施しながら、1年をかけて進める細かな技が光る作品「深秋」。同作品は、出展した高校生が優秀だと思う作品に投票する「学生が選ぶナンバーワン賞」も受賞しています。多くの人を魅了した作品制作に取り組む地理歴史部。「高校生になったら入りたい」と中学生から憧れの声を集めるという注目クラブの魅力を探ります。

全国高等学校鉄道模型コンテストとは…

「鉄道模型という文化系のクラブ・サークルの自由な発表と交流を通じて、活動の成果を構成に評価される機会が必要だ」と、2011年に実行委員会が設立され、その後「鉄道模型コンテスト」の開催を通じて、高校生同士のクラブ・サークル活動の活性化と交流促進を目指している。鉄道模型・ジオラマ製作に興味のある現役高校生が学校やクラブ・サークル・部活単位で参加。モジュール部門、1畳レイアウト部門、HOゲージ車両部門がある。優秀校はアメリカ・ミルウォーキーで開催される鉄道模型のイベント「Trainfest」へ招待される。

PROFILE
共立女子中学高等学校 地理歴史部
部員数:10人(高校2年:3人、高校1年:7人)
活動日:火曜・木曜 月1回日曜日にフィールドワーク
共立女子中学高等学校
地理歴史部ジオラマ作品「深秋」

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群馬県の伊香保温泉、東京都奥多摩の白丸ダムなどをモチーフにした「深秋」。紅葉が美しい11月3日正午の温泉街という設定で、日差しを考慮した植物の配置や色づきにもこだわった。
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左から)中澤さん[高校2年・現部長]/長峯さん[高校1年・新部長]/池末和幸先生[地理歴史部顧問・社会科教諭]

地理歴史部ってどんなクラブ?
地歴部の歴史と活動内容を教えてください。
池末先生
以前は史学部と人文地理部があり、人文地理部は部員がずっとゼロだったので廃部になるところだったんです。そこで2つの部をくっつけようということになって、地理歴史部という形で新たにスタートしたのが2011年ですね。ジオラマ製作は発足と同時に取り入れました。史学部のときは文化祭での発表も、大河ドラマの主人公の等身大の写真を出して内容を語る程度だったんです。それでもう少し趣向を変えて、現地調査で調べたものを形に残せないかとなった時に、他校の先生からジオラマ模型の話を聞いて「これはおもしろいな」と思ったんです。博物館に行くと、合戦場所などのジオラマがあるので、「あれを作ろうよ」と部員たちを口説いてスタートしました。表現法がいろいろある中のひとつとして模型を選んでいるのでベースは鉄道研究ではなく、その土地の地理や歴史について調べて、それをもとに模型で表現してみようという考えです。
地歴部の良さは何ですか。
長峯さん
少人数のクラブなので、先輩も後輩も分け隔てなく仲がいいです。だから作品を作る中でわからないことがあれば、気軽に聞きにいけます。
中澤さん
時間をかけてみんなでひとつのものを作っているので、完成した作品を見ても「本物の温泉街っぽいね」と、みんなで気持ちを共有できるんです。それが嬉しいし、達成感を感じます。
池末先生が地歴部の活動で大切にされていることは?
池末先生
2年前に最優秀賞を受賞した作品は確かに良かったのですが、前年が準優勝だったので「どうしても1位を獲りたい」と部員たちも思っていたし、その思いに応えてやりたいと僕の中にも強い思いがありました。全く妥協せずに厳しく作品を作ることに向かったんです。それだけに、生徒の心の成長を置き去りにしてしまったのではないか?という反省がありました。だから今は、生徒の試行錯誤を大切するとか、考えた通りに作って自分たちの作品だと達成感を持ってくれることを心がけていますね。その意味でこの1年は、物の見方、協調性など生徒たちの成長を感じます。
地歴部の楽しさ、大変さ
2人が地歴部に入部した理由を教えてください。
中澤さん
私は2年前に先輩方が鉄道模型コンテストで優勝されたのを校内に掲示された新聞で見て、おもしろそうだなと思っていたので入部しました。大会前になると朝から夕方まで細かい作業をやらなければいけないし、月1回の現地調査では日帰りで遠くまで行くので体力面で厳しい面もあって、文化部のわりにはハードなことをしているクラブだとは思います。でも、過去の先輩方もそうやって取り組まれてきたので、私たちもそれ以上を目指すという目標を持てるんです。
長峯さん
細かいものを作るのが好きで、自然や地理歴史なども好きだったので入部しました。前から鉄道模型の大会に出られていることは知っていたので、私もジオラマが作ってみたいと思ったんです。ただ、入部届けを最初に出した時は池末先生に断られました。それで3回くらい、入部したいと申し出ました。ずっと細かい作業が大変だよと言われ、相当厳しいんだろうなとは思ったのですが、やっぱりやりたいと思ったので入りました。
池末先生
入部前には、現地に行っていろいろ調べたうえでジオラマ作品を作ることを説明して、「根気もアイデアも工夫も必要だし、答えがないクラブだから覚悟が必要だよ。大丈夫?」と何回か確認しますから、みんな覚悟の上で入ってきていると思います。話をする中で本人も意思が固まり、「途中でやめないで頑張るぞという思いを持って入部してきてくれればそれでいいかなと思うので、最初に少し厳しくしています。以前は途中でやめてしまう生徒が多く残念でしたが、今はいなくなりました。
ジオラマはどのように製作していく?
2017年の「全国高校鉄道模型コンテスト モジュール部門」で最優秀賞を受賞した「深秋」の制作はどのように進んだのですか。
中澤さん
「深秋」の場合、部長だった私は制作責任者で、ジオラマを作る前の構想を練ることが役割だったんです。規定の60センチ四方の中にどういう作品を作るかを考える作業が、個人的には一番大変でした。大会の1年前から制作ノートを池末先生とやり取りしながら構想を練り、最初に「秋の温泉街」というざっくりとしたテーマを決めました。そして群馬県の伊香保温泉と、水辺の人工物がほしいということで奥多摩の白丸ダムに行くことにしました。場所より先に作りたいテーマを決めていきましたね
長峯さん
秋をテーマにした作品は初めてでしたが、この学校の地歴部のジオラマは植物に力を入れているので、ガケに松を多く生やして、雑草も1本1本地面に穴をあけて植えていきました。そこは一番苦労しましたね。
全体の構成を考え、発砲スチロールや厚紙などを使用して土台を作る。立体的に奥行きを持たせて表現することはとても難しい。
素材のアイデアや工夫はみんなで話し合って考えるのですか。
中澤さん
先輩方が作っていたものなら、そのアイデアを流用させてもらうこともありますが、今回は初めて秋がテーマで、ススキを作るのも初めてだったので、生みの苦しみがありました。先生にも相談しながら、試作を繰り返しました。
池末先生
試作品を作ることは多いですよ。まずはやってみようということです。それで失敗もあれば成功もあります。これでいけるとなったら、どうやって大量生産するのかを考えます。部員たちからは相談はされますが、かなり任せています。最終的に作るのは生徒たちですから。
作品製作時はどのような雰囲気ですか。
中澤さん
余裕がある時期は休憩中に話し声が聞こえますが、大会が迫って時間がなくなるとみんなが黙々と、ただひたすらやるという感じになりますね(笑)。
伊香保温泉や白丸ダムでの現地取材。射的場、細い裏道、水の流れ、紅葉の色づきなど…すべての観察や体験を通して感じたことがジオラマ製作に活きる。
写真だけでなく現地取材のうえジオラマ模型にすることで発見はありますか。
長峯さん
やっぱり現地取材しないと絶対にわからないことがいっぱいあるんです。例えばダムの全体像は写真でもわかるかもしれませんが、間近で見てみるとダムの柱の中に水門を引き上げるためのワイヤーがあったりします。
中澤さん
今までだったら建物も表側しか見なかったと思います。でも、模型を作るためには表側だけでは表現できないので、裏側にも回って観察することで気づきがたくさんあります。現地に行けば、それらを作品の中に表現していけるんです。
ジオラマ模型製作というと男子のイメージが強いですが、女子ならではの強みを感じられることはありますか。
池末先生
話し合いを大切にしているところかなと思います。話し合いをして、みんなが納得した上で情報を共有して先に進めていることはよく感じますね。1人の思いだけで突っ走るのではなく、話し合って意見をやり取りしながらより良いものを作っていこうとする姿勢は、すごく良いところだと思います。
地歴部に部室はなく、割り当てられた普通教室で製作。制服を汚さないためにエプロンをつけての作業が定番。
海外の鉄道模型イベントでの体験
最優秀賞の副賞として、部員全員が招待されたアメリカの鉄道模型イベント「トレインフェスタ」では、どのような手ごたえがありましたか。
中澤さん
大会に行く前はあまり私たちの作品に興味を持たれるとは思っていなかったのですが、日本に興味がある方など、いろいろと声をかけていただき素直に嬉しかったですね。海外の作品に対しては、全体を本物により近く見えるように工夫されているように思いました。
長峯さん
海外の人のジオラマを見る機会がないので楽しみにしていて、作品の雰囲気や作り方が、日本のものとは全然違って驚きました。海外では、ジオラマの中の“人”がストーリーを作っているという感じで、周りの設定よりも人を重視しています。そういう作品をたくさん見られたことは勉強になりました。英語のプレゼンも貴重な機会で、英語の勉強という意味でも発見がありました。
池末先生
生徒たちは本当によく乗り切ったなと思いました。大きかったのはプレゼンですね。それぞれのメンバーが交代でスピーチをしていくのですが、日本では個人練習だけしかできず、現地で通し練習をする予定でしたが、日本との時差で全員が疲れてしまい、なかなかうまくいかなかったんです。そこで部長が「プレゼンを聞いてくれるアメリカの人たちにきちんと伝えたいから、原稿は見ずに暗記しよう」と言ったんですね。それに部員たちが応える形で、良い方向にいきました。全員緊張はしていたと思いますが、とても良いものにつながり、成長してくれたと思います。
これからの地歴部
今後、地歴部として頑張っていきたいところは?
長峯さん
地歴部で大切にしてきたことは「共立らしい作品を作ること」です。植物を多く使うことはもちろんですが、ぱっと見てわからないようなわびさびや、静けさがある感じを出すということもあって、それはこれからも絶対に続けていきたいなと思います。今までの良さや「共立らしさ」は引き継いで、「もっとうまくできるんじゃないか」というところは改善して、来年はもっといい作品を作りたいです。
中澤さん
私はこれで引退なのでとても寂しいのですが、今年1年間一緒にやってきた高1の部員たちはすごく頼もしかったので、新年度に入ってくる新しい部員と一緒に私たちの作品を超えるものを作ってほしいなと思います。プレッシャーをかけるわけではないのですが(笑)、それを作れる部員たちだと思うので期待しています。

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