【鷗友学園女子中学高等学校】
学校が好きになる女子教育

鷗友学園女子中学高等学校 自己肯定感を高め、自分の場所を確立させれば、学校が好きになる
創立以来、生徒の可能性を引き出し、能力が発揮できることを目指してきた鷗友学園女子中学高等学校。その教育には、女子の特性を理解し、女子を伸ばすことを大切にしたとてもていねいな取り組みがたくさんあります。今回はその1つである「高校1年生による中学2年生に勉強を教える会」の様子を取材するとともに、こうした同校独自の学びの機会を設ける鷗友学園の女子教育について、校長の大井正智先生と入試広報部部長の若井由佳先生に話をうかがいました。

OHYU REPORT

高校1年生による
中学2年生に勉強を教える会

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相互の能力を引き出し高め合う
先輩から後輩への教え

他学年が修学旅行やテーブルマナーなど学外に出かける日に行われる「高校1年生による中学2年生に勉強を教える会」。約6年前に始まり、今ではすっかり行事として定着しました。当初は教える高校生が、「どうやって教えればいいのか」と不安を抱え、職員室に相談にやってくることも多かったそう。しかし、年数を重ねてきたことで、自身が中学生当時に教えてもらったイメージを膨らませ、後輩に少しでもわかりやすく教えるためのオリジナル教材を作るなど、自分たちで準備に励んで当日を迎えられるまで成長してきました。

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マンツーマンの家庭教師のように課題を解く後輩の様子を見守りながら適宜指導するグループ、資料やタブレットを使用してわかりやすく解説し順に理解度を確認していくグループなど、教えるための工夫や努力のあとがそれぞれのグループに感じられます。加えて緊張する中学生の気持ちもわかるためか、「ゆっくり考えてみてください」「難しくないよ」といった優しい声掛けも具体的です。

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中学生は先輩の前で課題に挑戦。難しそうな問題も先輩が一緒なら心強い限り。アドバイスにも熱心に耳を傾けます。「先輩みたいに教えられたらいいな」という気持ちを持てれば、どうにか理解したいという行動や努力にもつながるのかもしれません。
勉強だけでなく、先輩も後輩もお互いを尊重し合い、鷗友生としての姿勢や関わり方まで伝えていた教える会。クラブ活動とは違う先輩後輩の関係が見えた時間でした。

TEACHER INTERVIEW

常に変化するグループ
生徒にとっては
誰とやるかではなく何をやるかが大切

?友学園女子中学高等学校 校長の大井正智先生と、入試広報部部長の若井由佳先生

校長 大井正智先生
入試広報部 部長 若井由佳先生

生徒の想いを理解して教育に生かす

― 今日は「高校1年生による中学2年生に勉強を教える会」を見せていただきました。教える会が始まった経緯を教えてください。

大井校長 本校では毎年、卒業生80人ぐらいに来てもらって、中3や高1の生徒にいろいろな勉強方法や大学の様子、社会の様子を話してもらうということをやっています。鷗友で同じような生活をしていた先輩たちの大学生としての姿や社会人としての姿を見るのは、やはり在校生にとって大きな影響があるなと感じていましたので、その学内版みたいな形で教える会を始めました。教えるというのは、理解していなければ教えられませんから、高校生にはそこが大きいですね。中学生には先輩の背中を見るという意味合いがあります。

― 先輩への人としての憧れや学び方を意識することでの成長が大きいわけですね。

大井校長 中1ではお誕生日会を毎月開いていてそこで話をしていると、1年生もそろそろ理想的な先輩や好きな先輩を持ち出しています。「〇〇先輩みたいになりたい」「〇〇先輩かっこいい」という具体的なイメージや目標が持つことは、ただ頑張りたいよりも、とても良い効果があるように思いますね。

中1のお誕生日会の様子

中1のお誕生日会の様子。校長室に招かれ、ケーキをいただきながら校長先生と話をする

― そうした教える会やお誕生日会など、貴校は女子を教育することに対する丁寧さやこだわりが明確ですが、それは伝統的な部分が大きいのでしょうか。それとも時代に合わせて進化してきたのですか。

大井校長 創立者の市川源三は「教員は小児科医であれ」と言っています。小さな子どもは大人と違ってワーっと泣いているだけで、どこが痛いのかどこがどう気持ち悪いのかを言えませんが、小児科はそんな子どもを診断します。教員も小児科医のように、この子はどういう思いを持っているのかを理解しようとする必要があると言っていたのです。それはすごく大切なことで、本校はそれを女子教育においてどう生かしていくかを教員みんなで一生懸命考えています。

― 中1での3日に1回の席替えはその1つですか。

大井校長 そうです。最初から勉強ばかりをガツガツさせるのではなく、まず居場所を作ってあげようと。「ここにいていいんだ、私の居場所はここにある」という思いがあると勉強もどんどん入ってきますし、先輩の言葉もすっと入ってきます。学校も好きになります。「私の場所はここじゃない。認められていない」と思うと、全部跳ね返してしまいますよね。生徒がプライドを持てるために必要なものをそれぞれの学年や教員が工夫しています。今日の「高校1年生による中学2年生に勉強を教える会」も、教えることによって「教えたんだ」という思いを持つ高校生は自己肯定感が高くなり、教えられた中学生は「ああいう先輩みたいになりたい」と思って自分の場所を確立させていきます。

― 自己肯定感を持てると、自分の場所がある学校行きたくなりますね。

大井校長 学校行ったら勉強と宿題ばかりだと辛くなるだけですし、そこで自分の活躍できる場がいろんなところにあるというのは学校として大切だと思います。

学校生活は
人間関係が広がった方が絶対に安心

― 3日に1回の席替えの効果は、どんなときに感じられますか。

大井校長 毎月のお誕生日会である生徒が言っていました。「私は、先生方が授業のいろいろな場面でいろいろな人と話をするチャンスを作ってくださっているので幸せです」と。入学してくる生徒たちは席替えを知っていて、前向きに「いろいろな人と話をしてやるぞ」という思いを持ってきてくれています。それが実践できる場を学校が準備するんです。
それに3日に1回は隣が違う人だと、そのたびに話をします。ペアワークや4人でのグループワークなどでもいろいろな人と話ができるようになります。そうするとトラブルがあった時も、声を掛けやすいんですね。しょんぼりしていたら「お弁当一緒に食べよう」と言ってあげられます。保護者も最初は心配かもしれませんが、最初に話したこの子だけ、このグループだけというよりは、全体に人間関係が広がった方が絶対に安心だと思います。

― 人間関係がかなり鍛えられますね。

大井校長 その関係が当たり前になるんです。

若井先生 メンバーが変わることが日常です。もちろん仲良しの友達はいるでしょうが、学校の中の授業などでは何かやるたびにグループが違いますから、グループを作るときに「誰とやりたい」という発想は、本校の生徒たちにはないと思います。

大井校長 生徒たちにとっては何をやるかが大事なんです。

若井先生 それに、もしグループのメンバーを固めても6年間ずっとうまくいくことは絶対にありません。うまくいかなくなった時に、行き先がなくなるのも困ります。

― 社会に出れば求められる対応力を、鷗友生は中1からつけていくわけですか。

若井先生 もちろん中1、中2くらいまではいろいろあります(笑)。でも、高校生になってくると「誰でもいいか!誰とでもやる!」となりますね。
私のクラスで、高校でのクラスを作るスタートとなる箱根での合宿の前に「部屋割りをどうする?」と聞いたんです。すると、最初は誰かが「好きなものでいいじゃん」と言ったのですが、「こういう機会に好きな者同士はありえなくない?」という意見が出てきて…。するとみんなが「ああそうか」となって、結果クジになりました。

― クラスの最初だからこそ不安を感じ、知っている人と一緒になりたいと思うのは当たり前ですよね。

若井先生 6人部屋で全然知らない人と一緒の可能性もあるわけですから、私でもちょっと困ると思います(笑)。でも、「それはない」と言ってクジになったときに成長を感じましたね。

女子の方が計画的。
頭で考えて、グループで検証するのが好き

― 他にも、中1の理科は生物からスタート。それも女子の特性を活かしているとのことですが。

大井校長 女子は具体性のあるものから入るということが大事だと考えています。

若井先生 分子とか、力学とか、目に見えないものは後回しです(笑)。

大井校長 実験を数えられないくらいやって、「白衣を着るのが楽しい」という声があがる。そういう楽しみから入っていくのも女子にはいいと思います。理科だけでなく数学でも具体的なものからやっていきます。
男子の方が抽象的な能力が先に発達すると言われているので、算数でも説明を飛ばして答えが合っていたら「やったー!」となる。でも、女子は「答え合わせの時に、なぜそうなるかの説明も入るから楽しい」となります。具体的で理由が明らかになると女子は楽しみが増えるようです。

― 女子に合った理系教育があるわけですね。

大井校長 女子に合ったというのはわかりませんが、鷗友に合ったやり方だとは思っています。高2から理系と文系にわかれるので、例えば理科のカエルの解剖は高1が全員でやる最後のチャンス。その時には、ただ解剖するのではなく、自分たちのグループは何を調べたいのかを考えさせます。

若井先生 授業で説明することは、「班でカエルを1匹用意します。生命をいただくこのカエルから、あなたたちは何を学びますか?」だけです。麻酔が必要か不要かを事前に申し出てもらい、用意した解剖道具の他に必要な薬品や道具がある場合は買えるものなら買ってあげます、と言って準備をさせます。1ヵ月ちょっとかけて、カエル1匹をすべて調べてプレゼンして発表するという実験になります。

実験での解剖に夢中

実験での解剖に夢中

― なぜ高1の生物の最後にその実験をもってこられるのですか。

若井先生 私たちは生徒を小さな科学者だと思っています。研究というのは答えがありません。解剖もこちらから教えている時は、こう開いたら心臓が見えるというような答えがあるのですが、自分たちが何だろうと思ったことを探求していく最後の解剖実習は何も言わずに、質問にも一切答えません。質問されても、自分たちで調べなさいと言います。最後は自分たちで科学者の段階を体験して、自分で研究するおもしろさを知ってもらいたいのです。反対に中1で行うさまざまな解剖は手取り足取り、「そこを切っちゃだめ」「はさみはこうやって入れなさい」と指導します。

大井校長 基礎がある上で応用に向かっていきます。「自分たちが考えてやる」という技量をつけ、そこに面白さを感じるまでを高1で持っていくんです。

― どの教科でもそういう段階にあった学びを?

大井校長 そうですね。最初は基礎・基本を大切に、具体的なところから入っていって、そこから抽象的なものに進んでいきます。

若井先生 女子の方が頭で考えると思います。「こうやったら、こうなるんじゃないかな」を、まずは頭で考えてやってみて検証する。計画的だと思いますね。その場で思いついたことを突然はやりません。それを1人ではなくグループでワイワイと相談しながら「ああでもない、こうでもない」とやるのが好きですね。

自分の意見を言いながらも相手の意見を聞き
チームとして進んでいける人に

― では、完全中高一貫の6年間をかける女子教育の良さとは何でしょうか。

大井校長 6年を見通していろいろなことができることです。高校生から入ってきた人たちと一緒に作り上げていくことが今はなくなったので、そういう意味では6年間全体を見ながら教育していけるのは大きいです。

― ご家庭を含めた取り組みなどはされていますか。

大井校長 お家の方の意見が強くて本人が苦しんだりすることもありますから、子どもの話をよく聞いていただけるとありがたいという話はしています。親思いの生徒が多く、自分がこう言うとお母さんはこう思うかなとイメージを持ちすぎ、お家の中で意見が言いにくくなることもあるようです。そのあたりは、中学1・2年生での「アサーショントレーニング」を通して、だんだん自分の意見を言えるようになるといいなと思っています。

若井先生 他にも、本校は英語をオールイングリッシュでやっていますから、中1の最初に保護者の方に「わかった?と聞かないでください」とお願いしています。「わかった?」と聞かれると子どもはどんどん不安になりますから、英語の授業があった日は「楽しかった?」と聞いてあげてくださいね、と。大半の保護者の方はわかって下さって心配になると、子どもには言わずに担任に「大丈夫ですか?」とお電話があったり、先輩のお母さま方とお知り合いになると、アドバイスを受けられることもあるようです。

?友学園女子中学高等学校の大井校長と若井先生
― お話を聞いていると、やはり女子の教育だからこその丁寧さや段階は大切ですね。

大井校長 それが鷗友の教育ですね。その中で、それぞれが自分の意見を言いながらも相手の意見を聞き、チームとして進んでいくことができるようになればと思っています。
高3は1月になると特別授業になるのですが、わざわざ学校に来てチャイムに合わせて勉強しているんです。50分勉強して10分休みになると友達と話をして不安な気持ちを消化しているのでしょうね。そういう姿を見ると、学校も生徒の一緒に力を合わせてやっているのだなと思って、応援したい気持ちがますます沸いてきます。

― 鷗友学園として今後も変わらないこと、反対に発展させていきたいことはありますか。

大井校長 新しく入試が変わると言われて、英語の4技能についてもいろいろと言われていますが、本校は何も怖くはないと思っています。学校としては、しっかりと自分の意見を持って、どんな場面でも相手のことを思いながら、真のコミュニケーションの取れる人になっていってほしいです。

― 卒業生にはそういう方が多いですか。

大井校長 よく言われますね、去年ある人に「私は鷗友生を見抜ける」と言われたんです(笑)。きっと、人のことを考えながら自分の意見をちゃんと言える子たちなんです。

若井先生 卒業生が学園祭の受験相談に来たのですが、自分の子どもではなく「上司のお子さんが受験されるから、上司を連れてきました」と(笑)。でも、それは、上司が卒業生を評価してくれたということですから、すごく嬉しかったですね。

― 6年間で人間関係の築き方を身につけ、それを社会でしっかりと発揮しているのでしょう。

若井先生 そうだと思います。「私についてこい!」というタイプではありませんが、周りに人が集まってきて、気がついたらとりまとめていたというような子が育つ学校だと思います。

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