【田園調布学園中等部・高等部】
コアプログラム 成果発表会

SATURDAY PROGRAM 高等部1年コアプログラム 成果発表会 私学的授業 田園調布学園中等部・高等部
田園調布学園で生徒の知的好奇心を教養へと育む場として発展を遂げてきた「土曜プログラム」には、学年ごとにテーマを設けて発達段階に沿ったプログラムを展開する「コアプログラム」と、約170の講座から生徒が興味・関心に応じて選択する「マイプログラム」があります。
高等部1年の「コアプログラム」で取り組むのが「探究」。1年をかけて「人文科学探究」「自然科学探究」に向き合ってきた生徒たちの探究内容や作品発表が、「成果発表会」として1年の締めくくりに行われました。その様子とともに、田園調布学園でこそ可能な「探究」を追究する先生方の声を紹介します。

成果発表会REPORT

previous arrow
next arrow
Slider

1年かけてスパイラルアップしてきた
探究の成果を高等部1年生が成果発表

田園調布学園の第二校舎~創造探究棟~で行われたのは、高等部1年生たちの成果発表会。[課題設定]→[情報収集]→[整理・分析・検証]→[まとめ・表現]→[評価・振り返り]→[新たな課題の設定]とスパイラルアップをしてきた探究の成果を、各テーマに分かれて発表し、次年度同様の探究に取り組むことになる中等部3年生が各教室を順に巡って見学します。

自然科学探究 ~理科・数学・情報分野の専門的探究~
分野テーマ
物理物理innovation
地学Dagik Earthで地球を語ろう
化学簡易の燃料電池を作製し、自作のラジオを鳴らす
物理心霊現象を科学する
化学金属樹生成の最適条件を探る
生物光合成に必要な環境要因とその最適な条件を特定する
生物分子系統樹を作ろう
生物食品添加物を調べよう
数学身近なデータからわかることを統計学で分析しょう
情報「問題(発見)解決のため」モデル化とシミュレーション
previous arrow
next arrow
Slider

探究成果を形にしてポスター発表&実証実験

34名の生徒が参加した「物理innovation」講座の発表は10班に分かれ、身近な問題点を解決するために1年間かけて探究してきたことを、3Dプリンターを使用して実用的な形に作り上げ、過程をポスターにまとめて詳しく紹介。「心霊現象を科学する」講座のスライド班は、見学に回ってきた中学生に脳波キャップをかぶせて実際に心霊動画を見せ、脳波の動きを実証してくれました。そうした発表を見た中等部3年生の反応はオンラインで集約。「面白い装置だなと思いました」「身近な問題で興味を持てた」といった感想がすぐに寄せられリアルに手応えを得られるところにも、田園調布学園らしさが感じられました。

中等部3年生による評価や感想が次につながる

1年間の授業といっても実際には土曜に65分授業2コマを計6回。きっと隙間時間にもさまざまな努力やアイデアを出し合って試行錯誤を繰り返してきたに違いない高等部1年生たちからは、「達成感」「やりがい」「貴重な経験」「ものづくりの面白さを実感」といった言葉が飛び出しました。1年目にして大きな進展と手応えが感じられたであろう成果発表会。これから田園調布学園の「探究」授業がまた大きな歩みを見せそうな予感に包まれた1日でした。

STUDENTS COMMENTS 1

previous arrow
next arrow
Slider

自分たちのアイデアを詰め込み
完成させた達成感の大きさ

私たちは「物理innovation」(*1)講座を選択して4人で扇風機を作りました。夏の暑い日にベビーカーに乗っている赤ちゃんが熱中症になってしまう可能性があるときに、ベビーカーに取り付けられて、お母さんがわざわざボタンを押さなくても、温度や湿度によって動く扇風機です。
苦労したのはMESH(センサー)のケース。意外に小さくなってしまったので1回分解して、下の方を切って何とか入るように工夫しました。意外とうまくいったのはプロペラです。最後まで回るか回らないかがわからなかったのですが、試作品段階でうまく回ってくれました。
この講座では、自分たちの考えた身の回りで使えるものを完成させられたので、大きな達成感がありました。それが他の授業との違いで、そこが面白くて、授業は全く眠くなりませんでした(笑)。いろいろな人から意見をもらい、自分たちでは思いつかなかったアイデアも聞けたこともよかったです。もっといいものを作ろうと思って頑張り続けることができました。

STUDENTS COMMENTS 2

previous arrow
next arrow
Slider

協力や改良しながら
1からもの作りする喜びを知った

「物理innovation」(*1)講座は、身の回りの身近なものの問題点について高校生でも解決できるものを考え、自分たちなりに作ってみようという講座でした。私たちは防災防犯・家事・学校生活の3つのテーマの中から学校生活を選び、「先生お助けロボット」を作ることにしました。
このロボットは、田園調布学園に保護者が来られたときに、ボタンを押すとクラスカラーのLEDライトが光って行き先の場所がわかります。人感センサーによって挨拶もします。また、わからなかったときにはもう一つのボタンを押すと、事務室にメールが行き事務室の方が来て案内してくれるようにしました。 苦労したのは、ロボットとMESH(センサー)の形を合わせること。3Dプリンターで形にするのも10時間かかりましたが、大変であっても貴重な体験ができました。将来、もの作りに関わるなら参考になる学びだったと思います。
協力や改良して1からものを作りあげていくことの喜びも知れたし、最終的に形にすることの楽しさも知れました。普段、自分たちが作りたいものを形にできる機会はないですが、土曜プログラムという機会を通して、役立ものを工夫して形にできたことは良かったです。
(*1)「物理innovation」日々の生活の中にある課題を、MESH(SONY)というセンサーを用いて解決し、そのアイデアをTinkercadという3DCADアプリケーションから3Dプリンターで出力。IoTの仕組みや、「ものづくり」について紹介した。

STUDENTS COMMENTS 3

previous arrow
next arrow
Slider

普段の授業ではできないことに挑戦できた

私たちは心霊現象を科学で証明する「心霊現象を科学する」(*2)という講座でした。脳波に刺激が与えられた状態によって何かが表れたように錯覚してしまうのが、幽霊や心霊現象の正体だと考えられているので、脳波キャップを頭にかぶった状態で心霊現象の動画を見たり、単純に目を開け閉じるなど、いろいろな状態での脳波を測定しました。
難しかったのは、なかなか脳波が出なかったことです。脳波キャップを頭にはめたときにジェルを穴の中に入れるのですが、うまく入らなくて脳波が出なかったり、ジェルがベタベタしたり、時間がかかる作業でした。
探究の講座は、田園調布学園でしかできないことをたくさんやれたと思います。脳波キャップも学校で用意していただき、自分たちがやりたいことに挑戦させてもらいました。普段の授業では調べられないことを自分たちで実際に調べられたことはとても興味深かったです。発表もあって大きな達成感を感じました。
(*2)脳波発生の原理や測定の方法、典型的な脳波の測定を行い、脳波の波形からわかることを紹介。恐怖を感じる特殊な環境での測定により、心霊現象を目の当たりにしたときの脳波から、心霊現象の原因を考察。

TEACHERS INTERVIEW 1

スパイラルアップを大切にした探究で
課題にぶつかり解決する力を

理科教諭 入 英樹先生

― 成果発表会が行われた高等部1年生の「探究」は、2019年度が1年目の取り組みだったんですね。

入先生

そうです。土曜プログラムにはもう一つ、その道のプロの方に来ていただいて自由に受講する「マイプログラム」があり、今170くらい講座があります。「コアプログラム」は、学年ごとの発達段階に応じて適した講座に取り組みます。その「コアプログラム」の高1生の内容を本年度リニューアルし、「探究」としてスタートさせました。

― 「探究」授業の概要を教えてください。

入先生

基本的には本校の理科と数学・情報の教員が中心となった講座を行います。デザイン思考、SDGs、AIがテーマのものは外部の方に講座をお願いして講座を展開していきました。本校として、ディプロマポリシーや学校ルーブリックに目指す生徒像があって、そこに合致する形で課題を見つけ、整理分析し、情報をまとめて発表。それを振り返ってまた新たな課題を見つけて……というスパイラルアップしていくものを「探究」と位置付けました。
講座は理科教員が自分の専門分野でやるようなテーマを設けた講座や、専門外でもゼロから身近な課題を解決していこうとする講座ができました。数学なら統計もあります。そこから生徒たちは我々が思いもよらない結果を出し、いろいろな方向に進んでいきましたので、これがまさに「探究」だと思いました。

― 成果発表会では、課題を見つけてしっかり探究しているうえ、発表に慣れていて、ポスターもきちんと整理して読みやすくプリントされていました。これは、田園調布学園のこれまでの学びの成果かなとも思いましたが。

入先生

そうですね。中等部の1年生から理科の課題研究発表など、段階を追いながら各教科で表現力を身につけていますし、今日の「成果発表会」は4年間の集大成という意味もありました。中等部3年生が見学することで、「来年はどの講座を取ろうかな」「何をやろうかな」と考えますし、高校生は自分のやった研究なので自信を持って発表します。こういった経験をさせたいとはどの講座も考えていたと思います。

― 入先生の目指す「探究」とは、どのようなものだったのでしょうか。

入先生

本来、課題というものは自分で見つけてスパイラルアップしていくのが理想だと思っています。それは社会に出たら、課題は自分で見つけるものだからです。とは言え、高校1年生に全部丸投げで、「課題を見つけなさい、探究しなさい」と言っても逆効果で、やはりこちらからのアプローチが少し入った上で探究をすることが必要ではないかと考えました。1人1台持っているChromebookをしっかり使いながら表現することも大事にして、私の講座内でも必ず1人1回は発表させ、発表の場や表現力を重視しました。

― そこまでやってこその探究ですか。

入先生

ただ、私が考える探究はゴールを決めないものです。講座の中で「ここまでしか見えなかった」ということもありますが、それでもいいと思っています。まず今年は「課題が見つかるまでやる」でもいいですし、「ある程度解決策が見えた」でもいい。過程を大事にしたいのです。

― 成果発表会を終えて、手応えを感じられたところはありますか。

入先生

私は非常に良かったなと思っています。それぞれの学年でこういう発表会はやっていますが、探究という形でこれだけ題材がある発表会は今年が初めてだったので、外部の方や企業の方にも好評でした。それに生徒の表情を見ていると、自信を持ってやっていたので、それだけでも合格かなと思います。

― 普段から田園調布学園では数学や理科の指導に意欲的ですが、そうした授業が「探究」での課題発見力や実際に物づくりをしていく力につながったとは思われますか。

入先生

本校に理系の人数が多いのは、数学の授業でもわかりやすく丁寧に映像を見せたり、モノを持って立体的なものを把握してもらったり、理科でも実験もたくさん増やしているからです。そうして「私は理系が大丈夫!」「理系が好き」という感覚を持たせています。それがこうした「探究」でも抵抗なく違和感なく向かっていける理由かなと思いますね。やはり普段の授業でのベースがないと、いきなりものを作るのは無理かもしれません。

― 探究の学びを通して、生徒たちに身につけてほしい力はありますか。

入先生

これから変化が多い時代なので、絶対に課題にぶつかると思いますが、そういった時に解決方法はたくさんあります。課題の見つけ方や解決方法を「探究」では学んでいくので、いろいろな角度から研究することで物事を広く見る力につながります。そして課題を解決して振り返るという流れは、今後も活かしてくれるのではないかと思います。

TEACHERS INTERVIEW 2

予想通りにならないからこそ理由を分析
統計学は生徒の将来につながる力に!

数学科教諭 長岡 敬佑先生

長岡先生

私の担当した講座は「身近なデータからわかることを統計学で分析しよう」です。iPhoneのスクリーンタイムの週当たりの平均時間の研究発表、何歳までに結婚したいかのアンケート調査と分析、去年流行ったテレビドラマ「あなたの番です」の視聴率についての研究・発表、何歳まで働きたいかについてのアンケート調査と分析を、4チームにわかれて発表させました。
わずかなサンプルデータを基にしても、全体をある程度推測できる技があって、それを生徒たちに勉強してもらいました。手元にあるサンプルデータから大まかな幅を計算式で求めて、その幅の中に恐らく全体の平均も収まっているはずだという発想です。これは信頼区間と呼ばれる不等式で、どのグループも生のデータからこの不等式を計算しました。
ただ、iPhoneのスクリーンタイムの週当たりの平均時間を調べた班の出した信頼区間に全体平均も入るかなと思ってやってみたところ、普通なら入るはずが入らなかったんです。ただ、これはサンプルデータが10代のデータだったことから、「10代のスクリーンタイムが全国的に見て少ないと言ってしまっていいのでは」という予想が立つ。「信頼区間に入るはずだったけど入らなかった。残念」で終わるのではなく、別の観点で「こういうことが言えるんじゃないか」ということにつなげました。実際、その予想が妥当であるという統計的裏付けも生徒と行うことができました。それで生徒たちは、「なんだ、全然役に立たないじゃん」という感じに終わらず、自分たちで得られた結論には納得しています。

― 「なぜだろう、どうしてだろう、じゃあこうなのかな」と考える。そこが探究?

長岡先生

大げさですが探究です(笑)。アンケートの質問はすべて生徒が「これがやりたい」といって考えたもので、データ分析は私も素人なので生徒と一緒にやりながら「そういう風にも見られるかもね」と発見しながら進めていきました。

― 探究の講座は、先生方の得意を活かしたものが多いとお聞きしましたが、長岡先生が統計学の講座にしようと思われた理由は何ですか。

長岡先生

数学科として統計が今後は大事だという話を前からずっとしていて、早い段階で教科書の統計分野を広範囲に勉強しようと、数年前にいち早くカリキュラム編成をし直しました。
ですから本校では、中等部1年生からデータの分析をやります。加えて統計検定を生徒に受けさせています。まだそこまで受験者数が多くない検定ですが、近年のデータサイエンスが流行り出した風潮から、少しずつ統計検定も人気が上がっていますし、中等部3年生や高等部1年生が主な受験者ですが1学年の半分以上が受ける状況になっています。そうやって統計の大事さを打ち出してはいたのですが、生のデータを使って分析することにはなかなか至れていなかったので、ようやくその入口ができたと思っています。

― 統計と聞くと難しそうですが、テレビ番組の視聴率や結婚希望年齢など、身近な生データは取って分析するのは面白そうです。

長岡先生

一般のデータと手元の生データを比べることを、教科書の範囲の勉強ではまずやりません。だから、そういうことをやってみて面白いなと思ってもらえたり、統計とはこういう感じなんだと、統計の感覚をつかんで卒業してもらいたいという思いがずっとありました。出た数値結果をどう次につなげるかという探究ができたことは良かったです。

― 長岡先生が、この統計学の講座を通して生徒たちに期待することは?

長岡先生

統計は、難しかったと思うんです。ただ、この生徒たちが大学に入って各分野で統計に触れるときは、一般の大学生よりは免疫ができていて、ちょっと違ったステージで触れることができると思います。大学で卒論を書くときも、理系文系にかかわらず、どうしても統計の話が入ってくることがあります。そこでちゃんとした視点を持ち発表できるような学びができればいいし、大学の先の学びにもつながってくれれば嬉しいなと思います。そして現実的な話として、新たに始まる共通テストでも数学Bで統計の出題がありますが、世の中の9割方の学生はこの問題を選択しません。なぜなら通常、学校ではその分野をほとんど授業でやらないからです。でも今回やった内容は共通テストの出題内容にもドンピシャなので、選ぶことができれば点数も取りやすいんです。選択肢が増やせるんですね。

― 高等部1年生の探究授業としては、次の展開など何か見えましたか。

長岡先生

生徒に研究テーマを決めさせましたが、難しかったのはデータの比較対象にちょうどいいデータがなかなかないんです。例えば10代の女子というだけでも、国や一般の調査機関でのデータがないのでテーマの決め方やデータの集め方をどうするかは課題の一つです。そしてアンケートも、例えば「何歳まで働きたいですか」ではなく、「人生100年時代と言われていますよね。あなたは何歳まで働きたいですか」と枕詞をつけて聞くとおそらく結果は変わってきます。来年は生徒たちにそこも予想させながら進めると、よりクリエイティブになって思わぬ結果が出てくると思います。課題はありますが、その分だけ次につながるのかなと期待しています。

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で