【啓明学園中学校・高等学校 】
男子バスケットボール部

Slider
帰国生や外国籍の国際生が校内の30%以上在籍する啓明学園中学校・高等学校。異文化に触れ、英語が飛び交うことが日常の同校で、その啓明カラーが色濃いのが、国際生が多い男子バスケットボール部です。言葉や文化の壁を容易に超えてしまうのはもちろん、バスケットボールというスポーツを通して人間的な成長、将来につながる力を培っていく男子バスケットボール部。現在チームの中核を成す高校2年生部員4名と顧問の川口大輔先生に、啓明学園バスケットボール部について取材しました。

啓明学園 高校男子バスケットボール部

previous arrow
next arrow
Slider
previous arrow
next arrow
Slider
Slider

部員 27人[高1:9人 高2:7人 高3:11人 マネージャー:3名]
練習 週6日
学校HPクラブ紹介

STUDENTS INTERVIEW

部活ではバスケに
直接つながらないものにこそ
価値がある

  • 吉村くん(高校2年 国際クラス 部長)
  • 山本くん(高校2年 一般クラス)
  • 池田くん(高校2年 国際クラス 副部長)
  • 豊田くん(高校2年 国際クラス)

英語でも日本語でいい
大切なのは意思疎通

――啓明学園の高校バスケットボール部はどんなチームですか。

吉村くん みんな仲が良く、チームワークがあります。いつもは毎年、夏合宿があって、そこで一緒に生活して、たくさん練習をすることでみんなが一つになります。練習はきついですが、そのうえで自分が得られるもの、自分に返ってくるものが大きいと思うし、仲間との楽しいことが大きいクラブです。

池田くん 練習はつらいかもしれないけど、他のことがそれ以上に絶対楽しいです。それに先輩後輩に関係なく仲が良くて、学年の格差もないですね。

豊田くん 啓明学園は、生徒に帰国生も多く国際性豊かなので、普段から人との接し方がフレンドリーなんです。国際生の部員が多いバスケ部もそのままの雰囲気です。

山本くん 僕は中学では野球をやっていたのですが、彼らと先輩の交流や関わり方を見ていて「いいな」と思ったので、高校からバスケ部に入りました。仲が良いことによって協力し合えるので、それが試合にもつながってくると感じます。

――国際生が多いことが男子バスケ部の特徴の一つと聞きました。

吉村くん 去年やその前の代は、英語を話す部員の方が多かったくらいです。自分も日本語が上手ではないので、話が通じない時があって、普通ならそこで言葉の壁のようなものができてしまうと思いますが、啓明学園にはそれがない。バスケ部でも英語で説明したら、それを日本語に訳してもらって、みんなで助け合いながら伝えあっています。

池田くん 大切なのは意思疎通なので、英語でも日本語でも構わないからみんなに伝わるように説明しています。でも、試合で興奮すると、ほとんど日本語が出なくなります。

吉村くん そして、怖がられています。英語で話していたら、他のチームにおどろかれることはよくあります。

豊田くん でも、英語が話せても話せなくても居づらさがないんです。英語しかわからなくても、日本以外の国から来た子でも、どうにかして話をしていくのが僕らの普通です。

池田くん 啓明には国際生が3割以上いますから、何も気を使わずに安心していられるのがいいですね。部活でも本当の自分を思いきり表現できます。

挨拶や時間厳守
礼儀に対する教えは厳しい

――バスケットボール部の普段の練習について教えて下さい。

豊田くん 体育館を2往復と1/4走る「2.25」というメニューがあって、それを毎日10本やるのが定番です。顧問の川口先生からは、バスケ部は第一に走れないと試合もうまくいかないと言われていて、走ることには重点を置いています。

――学校HPの男子バスケ部の紹介で「礼儀、廉恥、克己、忍耐、百折不撓の精神をもとに練習を行なっている」とありましたが、そういう部分は大切にしているのですか。

山本くん きっちり挨拶をするとか時間を守るとか、礼儀に対する教えは厳しいです。

豊田くん 自分から手伝うことも率先してやります。部活にはあまり関係のない学校の片付けなどもよくするのですが、川口先生には「それをすることによって必ず何かが返ってくるから、自分たちから進んで奉仕をしなさい」と言われています。それをやり続けていると、練習場所をもらえたりして、本当にいろいろなお返しをもらえるんです。部活では、バスケに直接つながらないものにこそ価値があるんだなと思います。

人と人の
つながりが面白い
バスケットボール

――バスケ部に入ってからの自分自身の成長も感じますか。

山本くん 自分は高校から入部して、技術以前に精神力や忍耐力がついたなと思います。きつい練習が多いけど、途中でやめずに最後までやり切ることでかなり鍛えられます。

豊田くん 僕は啓明学園のバスケ部だからこそ、英語力や文化が異なる人との接し方が向上したと思っています。周りでも、啓明に入りたかった理由が「国際的な力や英語力を伸ばしたかった」という人が多く、バスケ部は特にそれができるクラブだと言われます。

池田くん 僕は、つらい練習を乗り越えれば必ず結果が得られるという実感を持てたので、継続力がついたなと思います。

吉村くん 僕はアメリカでバスケをやっていたんですけど、向こうは選手が自らの考えを口に出すことが少なくて、大体はコーチに従うんです。でも、啓明は先生たちがいろんな戦術を教えてくれますが、メインは選手。そこが一番違います。だからバスケ部では、自分の意見を人に伝える力と、自分以外の人に理解してもらうために工夫する力がついたと思います。

――練習はつらいという言葉は端々に出てきますが、部活は人間的な成長をさせてくれる場所なんですね。皆さんが夢中になっているバスケットボール自体の面白さはどんなときに感じますか。

吉村くん 一番は人とつながった時ですね。試合中や練習中に、仲間とつながる瞬間があるんです。言葉ではなく気持ちで通じ合う瞬間があって、僕はそこがチームスポーツとしてのバスケの魅力だと思います。

池田くん バスケは5人なので、全員に活躍するかっこいいシーンが頻繁にあるんです。そこはたまらないですね。

豊田くん 専門的な話になってしまいますが、シュートした時に相手からファールをされたら、そのシュートの点数プラスもう1本フリースローが打てる権利が与えられる「カウント」というルールがあるんです。そのときに自分も喜び、周りも全員が最高潮に盛り上がって、「アンド1!」(カウントの別名)と叫ぶ。最高の気分をみんなで共有できるところがバスケの良さです。

山本くん 中学でやっていた野球は、チームスポーツではあるものの個人の力量が出るスポーツでした。でも、バスケは5人で同じ動きをして助け合いながら協力するというチームプレーが欠かせないスポーツで、そこが一番の面白さだなと思っています。

自粛期間に感じた
練習ができる喜び

――今回、感染症対策で休校するという自粛期間があって、大好きな部活ができない日々を体験したわけですが、その中で感じたことはありますか。

吉村くん 一番は感謝ですね。仲間に会えること、体育館を使って練習できることに感謝しました。

池田くん 自粛していると体は鈍るし、1人で寂しかったです。毎日当たり前に思っていたことができるということ、体育館で先生やみんなと一緒にバスケができるありがたみを感じました。

豊田くん 僕は、自分たちがどれだけバスケが好きなのかがよくわかりました。「バスケがしたい」という気持ちを抑えてずっと我慢していたし、みんなが工夫して練習していると聞いて、「一緒だな。みんな好きなんだな。これからもっと頑張ろう」と思いました。

山本くん 自分は先輩のありがたさに気づかされた期間でしたね。自粛が明けたら突然自分たちが一番上の学年になっていたんです。先輩の凄さを実感しました。

――では、最後に今後のそれぞれの目標を教えて下さい。

吉村くん 部活をやる時はしっかり練習をやって、テスト期間は勉強に集中する。遊ぶ時は遊ぶことしか考えない。部活と自分の生活のメリハリをつけて、頑張っていきたいです。

池田くん 自分の目標は、後輩に積極的に話をしたり指導をしたりすることです。チームとしての目標は、大会で今までで一番の順位を取ることです。

豊田くん 僕は、高校からバスケを始めたので経験が少ないぶん、自己鍛錬というか、もっとバスケに慣れて、もっと自分自身の長けている部分を伸ばしたいです。部活としての目標は、啓明が強豪校という印象をつけられるようになりたいです。

山本くん 自分も初心者だったので、新しく始めた部員に寄り添って、自分の経験をどんどん教えていけたらなと思います。先輩方が築き上げてくださった啓明チームをこれからも続けながら、先輩方ができなかったことまで自分たちがやっていきたいです。

TEACHER INTERVIEW

ひたむきに努力した経験
社会に出てからも生きる

Profile

川口大輔先生
保健体育科教諭。男子バスケットボール部の顧問5年目。専門種目は器械体操とテコンドーであり、バスケットボールの経験はなかったが、部員とともにコートに入り、部活で培ってほしいスポーツ選手としての精神性をその指導で伝えている。

10代のうちに情熱を持って
全力で打ち込んだ経験
その後の人生においても
大きく役立つ

――川口先生が男子バスケットボール部を指導するうえで、大切にされていることを教えてください。

川口先生 単純なことなのですが、全力を尽くし、一生懸命やるということは大切だと思います。10代のうちに自分の好きな物事に情熱を注いだ経験は、20代、30代で自分が人生を賭けたいと思った職業に出会ったときにも、背中を押してくれる自信に繋がると考えます。

――部活動に熱中することが将来に活きてくると?

川口先生 こんなことを言ったらバスケットをやっている方に申し訳ないのですが、籠にボールを入れる技術自体は、実社会ではあまり役に立ちません。私自身学生時代に得たバック転や後方宙返り、蹴り技などは役に立ったことはほとんどありません。しかし、技術の完成に向かって全力を出した経験や抽象的な事象を考え続けた経験は間違いなく社会に出てからも役に立ちます。
また、同じ目標を持つ組織の一員として周囲へのサポートや責任を果たすことなどは座学だけではなかなか学ぶことができないことなので、バスケットボールというゲームの中でも徹底してやりなさいと教えています。

――やるべきことを徹底してやることが大切?

川口先生 そうですね。例えばですが、バスケットボールの話でボールがライン際に転がるルーズボールになったときには、私は部活の中で誰よりも必死なに取りいくようにしていました。
スポーツを始めたばかりの子どもは少し冷めているんですよね。だから、その姿を見て「先生必死すぎるだろ…」と。しかしその行動を繰り返すと、試合の中で圧倒的な差につながり、その結果私が勝ち続けると生徒たちもその行動を真似するようになります。実際ボールを保持することは得点の権利を持っていることですから、だからこそ誰のものでもないときには何が何でもとるように教えています。

風向きが悪い時にこそ
明るく前向きに
チームを鼓舞し、
軌道修正をおこなう

――部員と一緒にコートに入って練習することも、大事にされているのですか。

川口先生 勝負における強気な姿勢は常に見せようと考えています。私は練習中の紅白戦で敗戦色が濃厚な局面でも「1点でも多くとろう」「ルーズボールはすべて拾ってシュートで攻撃を終えよう」とチームを大声で鼓舞することがよくあります。生徒たちにもそうあって欲しいと願っています。風向きが悪い時にこそリーダーシップは求められ、明るく前向きに軌道修正を行っていくと次につながる良い経験になるのだと考えています。

――部員の皆さんもこの部活では、技術力よりそれ以外の力がついたと言っていました。先生が目指すチームが作れているのでは?

川口先生 このチームは私だけが作ったものではありません。OBを含む、多くの部員たちが時間をかけて作ってきたものです。関東大会予選支部戦でベスト16までいった代がいたり、ポテンシャルや技術には恵まれなくともバスケットをどの代よりも愛し、練習を決して休まない代がいたりと、いま当たり前のように部活の中に流れる普通という感覚はOB達の努力が積み重なった結果だと思っています。

――男子バスケットボール部は、国際生が学校のクラブの中で一番多いそうですね。

川口先生 英語しか話せなくても特に問題ありません。日本語も英語もしゃべれる生徒が数多くいますし、コーチも海外の大学に在学経験があります。皆NBAが好きでよくその話で盛り上がっていることが多いです。私もよく生徒に「このチームを見たほうが良いですよ」「この選手は先生が好きそうだから見てください」と動画を教えてもらっています。
試合に行った時も部員達は英語でコミュニケーションをとっていることが多いので周りの学校からは驚かれますが、英語のほうが細かいニュアンスが伝えやすくて楽という生徒も多いのでそれはそれでいいと思っています。そういう環境が大きいんだと思います。

――顧問としては、いろんな言語や文化を持つ部員をまとめる上での苦労もありますか。

川口先生 苦労は多かったですね。文化が違うと非論理的なことは伝わりづらいです。常識なんて全く通用しません。そのため合理性を重視してきちんと筋道立てて、「だから、こうしようか」と伝えていくようにしています。
うちの部活動ではレイカーズに所属していたコービー・ブライアントの人生観とバスケット観である「マンバ・メンタリティ」をよく英語のまま紹介します。スポーツ選手の理想的な姿と精神性を、雄弁かつ詩的に語っているので、スポーツに向き合うということはこういうことだと伝えると、国際の生徒たちの心にはすっと入ります。

優先順位は健康、勉強、
その次がスポーツ、
そしてそれ以外のこと

――川口先生はもともとバスケットボールをされていたのですか。

川口先生 私は小学校1年生から18年ぐらいテコンドーをやってきました。個人的に格闘技が一番性に合っていて好きです。また中学高校は器械体操部にいたので、チームスポーツは全くの専門外です。一般企業で社会人経験を3年経たのち、非常勤講師としてラグビー部の顧問を任されました。そこで初めて個人スポーツとチームスポーツの精神性と考え方、特性の違いを実感しました。だからスポーツを全体に通じる精神性を獲得するための下準備をよく行うようにしています。

――先生がバスケットボール経験者ではないからこそ、見えたこともたくさんあったのでしょうか。

川口先生 私はテコンドーの全日本大会で優勝したのですが、そのなかで思ったのは、個人スポーツはとにかく効率重視です。例えば攻撃をしてシュートをきめたらすぐディフェンスに戻り、できるだけ動かないようにして、次の攻撃に備え体力を温存する。相手の癖を読みながらこれをひたすら繰り返すのが個人スポーツのイメージです。
しかしチームスポーツは、試合の中でハイタッチをしたり、褒めあったりと何度もコミュニケーションを繰り返します。私は学生時代その意味が全くわからず「なにそんな無駄なことやってんの?」と思っていました。でも、ラグビーでチームスポーツをやってみて、1人でできることの限界が存在することを知りました。どんなに1人で気を張っていても、人と人との間には必ず隙間ができるんです。
それをコミュニケーションや心を通わすことによって士気を高め、お互いをカバーしあいながら隙を埋めているのかなというのが、今の自分の中での見解です。だからチームもそういう風に育てるし、士気を上げるためにコート内でネガティブな言葉は禁止してます。また、強くなるためには他者に対する優しさも重要です。自分の持っている技術は惜しみなくチーム内で共有するように伝えています。これをすることによって生徒たちは公私ともにとても仲が良いです。

――部員の皆さんは部活が楽しくて、部活ができないこと試験期間の休みが辛そうでした。勉強との両立における指導もされるのですか。

川口先生 勉強はするものですし、「すべてにおいてベストを尽くしなさい」と言っています。すべてにおいてなので、テストでも分からないから書かないのではなく、少しでもチャンスがあるのならつかむ。つかもうとしないのは結局プレーにもつながりますから、すべてにおいて粘り強く最後まで出しきれと言っています。部活は人生の中の部活という切り取られた時間ですが、そこではその子の培ってきた価値観や人格がはっきりとあらわれます。

――今後、男子バスケットボール部として挑戦していきたいこと、受け継いでいきたいことを教えてください。

川口先生 いいメンタルトレーニングといい体力トレーニングが積み重なれば、その上に技術はいくらでも乗ってくると思うので、下地をしっかり作っていきたいです。どういう心持でスポーツに臨むべきなのか、どういう心持で人と接するべきなのかというところをしっかり伝えていきたいです。
あとは彼らに「バスケ部はきつかったけれどいい場所だったな。」と思ってもらえると、私の仕事のやりがいにもつながりますね。そういう場所になれば、きっと組織としても強くなるし、さらに成長すると思います。

インタビュー取材は2020年7月に行いました。
記事中の写真はすべてコロナ禍以前に撮影したものです。

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で