【晃華学園中学校高等学校】
水ロケット大会

2019年、APRSAF宇宙教育分科会主催、JAXA宇宙教育センターが事務局となって「APRSAF-26 水ロケット大会」が開催されました。次世代の宇宙飛行士を夢見る高校生たちが多数参加する中、晃華学園からも高校1年生の3チームが参加しました。そのうちの1チーム「せまるきししかまる」は、初参加にも関わらず、なんと1次審査を見事通過し、全国7チーム入りを果たしました。これは、女子校では晃華学園のみの快挙です。ココロコミュEASTでは、参加した3チームから4名のメンバーと、彼女たちを指導した熊井孝弘先生に、お話をうかがいました。
  • 目的
  • 水ロケットを通じてものづくりや科学技術を学び、国際交流を深める
  • 実施方法
  • 書類選考の1次審査を経て、2次審査では面接及び水ロケットの打ち上げ実験を行う。水ロケットは、ペットボトルに、ノーズコーン(先端にあるとんがり帽子のような部分)や羽を付けた仕様で、水を燃料にして加圧用器を使用し、50メートル先の的をめがけて飛ばす。
  • 参加
  • 中学2年生(12歳)~高校1年生(16歳)の生徒および教員・指導者。
アジア・太平洋地域にいる同じ志をもつ仲間との国際交流により、夢や向学心を広げていくことを重視している。
1次審査
書類選考。生徒・教員共に3種類の作文を、それぞれ800字以内で書く。
  • 生徒
  • 1.応募動機
    2.水ロケット製作における工夫、また製作と打ち上げを通して学んだこと
    3.海外の仲間と交流するうえで大切なこと
  • 教員
  • 1.応募動機
    2.水ロケット大会の参加経験を、学校や地域でどのように生かしたいか
    3.実体験をふまえた上で、国際交流を進めるために重要なことは何か
2次審査
面接および水ロケットの打ち上げ実技。面接は英語による5分間のプレゼンテーションおよび質疑応答で、テーマは「自己紹介および学校や地域の紹介」。実技では50m先にある的をめがけ、オリジナルの水ロケットを飛ばす。
  • ―晃華学園から水ロケット大会に参加したのは今回が初めてだそうですね。どのようなきっかけで参加されたのでしょうか。
  • 熊井先生 この大会の趣旨に賛同したのが大きいです。大会の案内がJAXA事務局から5月に送付されてきたのですが、ただ単にロケットを飛ばすだけでなく、国際交流をロケットで行うという点が新鮮でした。これは私にとっても、生徒にとってもチャレンジになると直感し、ワクワクしながら校内掲示板に募集のお知らせを貼ったことを覚えています。最初の呼びかけは「まずは水ロケットをとばしてみよう」というものでした。この呼びかけに10名ほどが参加してくれ、最終的には科学同好会を中心に6人が参加すると名乗りを上げてくれました。
    1次審査では、水ロケットを自作し、数回飛ばして気づいた点、さらには国際交流について大切にしたい点や動機をまとめました。限られた時間しかありませんでしたが、生徒たちと一丸となって集中して取り組みました。
  • ―皆さんが水ロケット大会に参加しようと思ったきっかけを教えてください。
  • Tさん 理科が好きで宇宙にも興味があり、水ロケットを作ったり実験を重ねたりするのが楽しそうだと思ったからです。
  • Yさん 私には決め手が2つありました。1つはなぜ水と空気だけでロケットを飛ばせるのか、その原理が気になったことです。もう1つは大会で行う50mの的をめがけて飛ばす実技が面白そうだったからです。
  • Maさん私は、水ロケットはもちろんのこと、特に英語によるプレゼンテーションに興味が湧きました。英語は得意科目というわけではないのですが、プレゼンをやることで、英語力を伸ばしたいと思いました。迷っている私に、科学同好会の皆が「やろう」と言ったので、後に引けなくなったことも大きいです(笑)。
  • Miさん 私は、他の皆とは少し違う動機です。6人とは中1からの仲間でしたが、今回このプロジェクトを通してもっともっと絆を深めたいと強く思ったからです。
  • ―皆さんそれぞれの動機をもって1次試験の作文に臨まれたのですね。作文ではどのようなことを書いたのですか
  • Tさん 「はやぶさ2」のニュースに触れて、宇宙に興味が湧いたことを動機として書きました。また国際交流については、海外の仲間との交流を通して英語を通してのコミュニケーションの楽しさを知ったので、それをまとめました。
  • Yさん 水でロケットを飛ばせるということは、将来は大きなロケットも水で飛ばせるのではないか?そうなったら、いま世界が抱えているCO2の排出など環境問題解決の糸口になるのではないかと思ったので、それを中心に書きました。
  • Maさん 水ロケット製作過程で、飛行機など実際に世間で使用されている物をどう応用していくかに注目し、それをまとめました。例えば、羽の枚数などです。国際交流については、どうすれば言語の壁を超えてコミュニケーションが取れるかに強い興味があったので、そのことを書きました。
  • 1次試験の作文
    Miさん 私は応募動機として、「答えのない課題を考えたい」と書きました。学校では正しいと分かっている知識を学びますが、水ロケットをどう飛ばすかという課題には正解がありません。そこを自分たちで工夫し試行錯誤するのは、答えを自ら築き上げていくことになるので、そこに興味が湧きました。
  • 1次試験の作文
  • 熊井先生 大会目的の「水ロケットを使って国際交流をする」が私には新鮮で非常に魅力を感じたし、生徒と一緒になって、水ロケットを飛ばす、ということにもやりがいを感じたのでそれをまとめました。
  • ―1次選考を経て2次審査に進んだのはチーム「せまるきししかまる」ですね。
  • 熊井先生 はい、残念ながら、他チームは1次審査通過とはなりませんでした。けれども1次審査に向けて一緒に実験を行ってきた彼女らが、最後まで「せまるきししかまる」に協力してくれたのはとても大きかったです。皆が一体となったからこそ、「せまるきししかまる」も心強かったですし、2次審査へと駒を進めることができました。
  • ―1次審査後から2次審査までの様子を聞かせてください。2次審査の水ロケットを50m飛ばす実技と英語のプレゼンテーションはどのように準備をしたのですか。
  • Maさん 準備する時間が少なかったのですが、ロケットの独自性を出すことに集中して取り組みました。王道というか常識的なことだけをやっていたのでは、周りに埋もれてしまうと思い、羽の枚数を変えるだけではなく羽を機体の前方につけてみて実験をするなど、様々なアイデアを実行にうつしてみました。
  • Miさん プレゼンテーションに関してですが、事前に台本を作って準備していたので内容に自信はありましたが、当日の英語での質疑応答はやはり怖かったです。当日は最初に英語で質問されたのですが、他の参加者と答えがかぶらないようにしながら自分の意見を答えるのは難しかったけれど、やりがいがありました。
  • ―大会参加がロケット製作のきっかけになったそうですが…
  • Tさん そもそも水ロケットがどういうものかを調べるところからスタートしました。ノーズコーンの形や高さ、羽の向き、水の量や空気圧などをいろいろ変えながら進めたのですが、初めて50m飛んだ時は嬉しかったです。
  • Yさん 最初はロケットが前に飛ばなかったり戻ってきたりして、全く安定しませんでした。距離を出すよりまず安定させるために苦労しましたね。
  • ―熊井先生は、実験についてはどうでしたか。
  • 熊井先生 生徒たちだけで柔軟にアイデアを出し合って色々な工夫を考え出していました。自由な意見を出してもらいたいと考え最初に伝える知識は最小限にしました。実験を繰り返していく中で、水ロケットの原理を自分たちで理解していったんです。これこそ理科教育の本来のあり方だなと感じました。
  • Maさん 扇風機の羽の枚数を見て、羽の枚数や形がひらめいたんです。
  • 熊井先生  ペットボトルの水の量や、羽の枚数や形状などの条件を色々変えて実験しながら実験を重ねていくうちに、今度は羽を機体の前方につけてみようとか、ノーズコーンに穴をあけて空気の流れをコントロールできるのでは、などアイデアがどんどん出てくるようになり、生徒たちがどんどん実験にのめりこんでいく様子がわかりました。生徒たちはまさに今実験の醍醐味を味わっているのだと実感しました。私の心にずっと残っている言葉に、学生時代の恩師からうけた「100%あほらしいことでなければ、やってみる価値はある」という言葉があります。生徒にも時々この言葉をかけてみたりするのですが、今回、生徒たちの行動からあらためて私はその言葉を学んだと感じます。
  • ―それでは2次審査当日の様子について聞かせてください。
  • 熊井先生 当日は、自作のロケットとプレゼンテーションの道具(多面体)をもって、生徒2名と私の3人で、学校の終業式がおわってすぐにJAXAの会場に向かいました。会場につくと、水ロケットをランチャーに装着できるか確かめたあと、すぐにプレゼンテーションの時間となりました。生徒2人に私も加わって3人で英語でのプレゼンテーションを行いましたが、2人とも堂々と英語で発表し、質疑応答までこなす姿は、本当に素晴らしいと感じました。私は足をひっぱらないようにがんばりました。
  • ―プレゼンテーションの後は、実技試験だったのですね。
  • Maさん 会場についてからは水ロケットを試しに飛ばしてみることはできず、いきなり本番の発射試験だったので、その場で対応するのが大変でした。特に、用意されたランチャーは普段私たちが使っているものよりもかなり立派なもので、いつもどおりの空気圧と水の量では、飛びすぎてしまうことがわかったのです。
  • Miさん私たちの前の順番だったチームも水ロケットが飛びすぎて苦労していました。そこで私たちも対策しなくてはと話し合い、結局、打ち上げの角度を大きくすることにしました。そうすれば発射速度が大きくても、落下地点が大きく変わることを防げると考えたのです。
  • ―なるほど。実際飛ばしてみて、どうでしたか。
  • Maさん 2回の発射チャンスがあるのですが、1回目はとてもきれいに飛ばすことができ、他のチームの方からも「きれいにとびましたね!」と声をかけてもらえました。2回目は、機体の強度不足のためかうまく飛ばず、くやしかったです。
  • ―皆さんは中1から仲が良く、また科学同好会でも一緒に活動している仲間だそうですね。お互いをよく知っていると思いますが、今回の参加で新たに発見した一面はありましたか。
  • Miさん Maさんから出てきた3枚羽にするというアイデアに対して、私は「飛ぶわけがない」と勝手に決めつけてしまったんです。でも彼女の意見に従ってやってみたら良い感じになったので、自分だけでは知り得なかった道が拓けたんだと実感しました。
  • Maさん 私もMiさんのアイデア力がすごく高いことを再認識しました。英語のプレゼンテーションに多面体の模型を使い、「この模型は多くのパーツでできている。この模型のように、私たちは仲間と互いに支え合っているから、今この場に立てている」という内容にしたらどうかというアイデアを出してくれたことが印象的です。最終的には、「1人ひとりは不完全なピースだけれど、集まるとしっかりした形になる」と表現することができました。
プレゼンテーションで使用した多面体の模型
  • Tさん Yさんは細かい点に気がつくしっかりした人で、実験の結果も全部メモしてくれていたのですごく助けられました。グループは違ったのですがMaさん、Miさんとも実験を重ねていくうちに、自分にはない新たな視点に気づかされ、他の人と一緒にやれば足りない点も補い合えることを感じました。
  • Yさん Tさんは人のために率先して動いてくれる人です。材料調達を全面的にお任せしていたのですが、彼女は自分から「私が行くよ」と言ってくれるので、そういう行動ができるTさんを尊敬しました。発想がそれぞれ違って、「こういう視点があるんだ」とすごく驚かされることが多かったです。
  • ―大会への参加を通して、自分が成長した点や変わった点はありますか。
  • Miさん 私は物事に取り組む前に「何か意味があるのだろうか」と思ってしまう方でした。けれども今回はまずやってみよう、と参加したことで、仲間との絆や英語力などを得ることができました。だから、あれこれ思い悩んだり、やる意味にこだわらず、「まず行動してみることの大切さ」を今後も実践していきたいと思います。
  • Maさん 私は、大会の2次審査で他校の生徒さんとお話をしたことがきっかけで、英語をもっとしっかり学ぼうと思いました。中学生ですでに英検1級を取得している人と知り合ったのですが、いつも英字新聞を読んでいると聞きとても驚きました。この経験で、自分が生きてきた世界の外はもっと広いということを実感したことが、自分が成長したことの1つかなと思います。
  • Yさん 私は根っからの文系なので、水ロケットの製作など物理が絡んでくる分野が自分にできるだろうかと不安でした。でも今回の経験を通して、文系とか理系にとらわれず挑戦することがすごく大事だと実感しました。
  • Tさん 水ロケットという理系の実験が国際交流につながることが新鮮でした。水ロケットの原理を学んだのは最近のことですが、原理を知らなくても実験をして多くの経験と知識を得られることがこんなに楽しいとは思いませんでした。
  • ―熊井先生は、彼女たちの話を聞いて、いかが思われますか。
  • 熊井先生 経験のないことばかりで私もどうなるかなと思っていたのですが、水ロケット製作にしても英語でのプレゼンにしても、生徒たちがいろいろな意見を出し合い、すぐに実行していった点が素晴らしいと思いました。6人の参加メンバーは興味の持ち所がそれぞれ異なりますが、だからこそその過程を楽しめたし、チームの区別なく自然に協力し合ってくれた点も非常に良かったです
  • ―今年は新型コロナ感染症の影響で大会は中止とのことですが、今後も彼女たちの活躍や成果は後輩に受け継いでいかれるのでしょうか。
  • 熊井先生 そうですね。今後もぜひ続けていきたいです。プレゼンの質疑応答で私への質問が、日本では理科に対する興味が中学・高校で落ちるというデータがあるが、これはなぜか、といった内容でした。とても耳が痛いものでしたが、学校では理科の面白さよりも、正解を出すことが重視されすぎているためではないかと思ったんです。そこで「チャレンジすることに失敗とか間違えというものはない。間違ったとか失敗したとか思うことがあったとしても、そこから何かを学ぶことが次につながると理科の学びを通して生徒たちに伝えていきたい」と答えました。いろいろな発想を自由に試せるこのような大会があるのはすごくありがたいことです。今回、参加はしなかったけれども、大会に興味をもって「水以外ではダメですか?」「炭酸水を使ったらどうでしょう?」など、いろんなアイデアを出してくれた生徒もたくさんいました。そういう興味が今後、校内でさらに広がっていったら楽しいなと思っています。

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