【田園調布学園中等部・高等部】
卒業生と理科教員が語る
理科教育

田園調布学園中等部・高等部 イメージできるから理解できる とにかく楽しい理科授業
「協同型探求授業」「教科横断型授業」など様々な形で生徒の学びの意欲を伸ばしていく田園調布学園中等部・高等部。そうした授業によって、生徒が特に興味・関心を高め、学力をつけていく科目が理科と数学です。2021年度の大学入試において理系志望者は約45%にのぼった同校。具体的にどのような教育や指導が、理系における学びの意欲を向上させ、進路にも結び付けていくのでしょうか。今回は理科教育に絞り、卒業生と、彼女を指導した先生に話を伺いました。
<*本インタビューはZoom取材で行いました>

入 英樹 先生[理科教諭/物理担当]副教頭・教務部長
今井さん[筑波大学医学群医学類5年生]2017年田園調布学園卒業

\田園調布学園の理科授業/ とにかく楽しい授業。
イメージできるから理解につながった

― まずは、今井さんの田園調布学園での思い出を教えてください。

今井さん 女子校ということもあって、クラス全員が分け隔てなく、休み時間も授業中も一緒になって話をしていた記憶があります。お互いに教え合い相談し合いながら授業を受けていたので、勉強していても楽しく、何より勉強が苦にならなかったことが私にとって一番大きいです。宿泊行事などいろいろな楽しい行事もありましたが、私の思い出は普段の授業。みんなで学んだことが特に記憶に残っています。とにかく授業が楽しかったです。

― 今回はその中でも理科教育について話をうかがいます。田園調布学園の理科授業の印象は?

今井さん 隣に入先生がいらっしゃるので物理の授業に関してお話すると、例えば力学の場合も単に数式で計算するだけではなくて、この式だからこういう運動になると頭の中でイメージできる授業でした。そこが私の中では印象深いです。もしかしたらそこが他の学校と違ったのかなと思います。
私は国立大志望だったので文系科目も受験勉強が必要で、時間がない状況でした。その中で、物理の勉強は勉強の時間というより休憩のようにリラックスできる楽しい時間でした。

― 今井さんはもともと理科が得意だったのですか。

今井さん 苦手です。中学2年生で一度物理があったのですが、その時は「できない」と思ったほどでした(笑)。その後、生物か物理の選択時も最後まで「物理はやめようかな」思っていたのですが、中学3年生の後半から「医学部に行きたい」と思っていたので、大学受験のことを考えて渋々物理を選択し、高校2年から入先生の物理授業を受けました。

― 苦手意識があった物理を、どのようにして好きな科目にしていったのでしょうか。

今井さん 入先生の授業は、各単元に入る時にいきなり説明してすぐに練習問題を解くのではなく、基本事項や公式の導き方を最初の授業でしっかり教えていただきました。それが理解につながったと思います。
また、単元ごとに学習が終了するのではなく、前回の単元を活かして次の単元につなげていき、全体が流れるように進んでいったこともわかりやすかったです。

\物理授業の要点/ 物理は世の中とのつながりがイメージしやすい科目
数式で理論がわかると楽しくなってくる

入先生 物理には流れがあるのです。その流れを伝える中で「今回の章はこの現象に関して扱っていくものである。これには先人たちが築いてきたこういう公式がある」と話します。肝を押さえた上で、いろいろな実験道具を踏まえながら、「これはどういうものだ」と説明することはすごく大事だと思っています。
最初に何を扱うのかがわからなかったり、わからない式があったりして「この単元は嫌だ」と思うと、生徒は物理すべてが嫌になってしまうのです。ですから、最初が肝心です。

― 入先生にとって、今井さんはどういう印象の生徒でしたか。

入先生 今日話を聞いて、そういうふうに思っていたのかと驚いています(笑)。私は高校2年生から2年間今井さんの物理授業を担当しましたが、もともと理系が好きで医学部志望と相まって物理を選択したと思っていたぐらいです。実は、今日取材があるということで今井さんの高2からの成績を見返してきましたが、高2の物理は大半が10段階評価の10です。高3の模擬試験の結果も一番良いSランクです。ですから、渋々選択した結果、授業を通して物理の学習が楽しくなったという非常に良い結果につながった人だと思いますね。

― 今井さんは物理に楽しさを見出しましたが、物理が楽しいという声はなかなか珍しいですね。そこには入先生の工夫があるのでしょうか。

入先生 確かに物理は、世の中的に嫌われる科目です(笑)。数学は出てきて、現象もちょっと難しい。ただ、日常との関わりが大きいので、世の中とのつながりや関連性がイメージしやすい科目でもあるのです。イメージができて、数式で理論がわかってくると、すごく楽しくなってくる科目だと思います。
授業で日常との関わりについて学んだあと、試験で良い点数を取ると「物理、意外といける!」となってきますから、そんな良いサイクルができると学習が楽しくなっていきます。おそらく今井さんはそういった物理の魅力に気づいてくれて、2年間頑張れたのでしょう。

今井さん 確かに、日常とのつながりがわかると記憶しやすくなるのです。テレビのおもしろい実験番組を見ているような授業で、「こういうことある!」「あれのことか!」と日常と結びつけていくと楽しく、勉強という感じもしませんでした。

― 指導される側から見た田園調布学園の理科教育の良さは?

入先生 中学は、化学、物理、生物、地学といったどの分野でも実験が多く、実験をやる中で「理科は楽しいのではないか?」と感じ、そこから理科の魅力に入っていくことです。高校になると楽しいだけではなく、少し難しい内容も出てきますが、その壁を取ることを一番の目的とします。
そのために、日常とのつながりをわかりやすく伝えてやる気スイッチを入れ、生徒同士が人に教えることによって理解し、成功体験にする。本校では数学や理科に関してそういう工夫に重きを置いています。今井さんが冒頭で言っていたクラスの中で教え合い相談し合いながらメリハリつけて進める授業は、今でも継続していまして、2年ほど前からは本校の教育において重要な位置づけとなっています。
その結果、理系の志望者はかなり多く、こうして医学部で立派に活躍している卒業生が出ています。理系の生徒からは、「数学や理科がすごく苦手」という話はあまり聞きませんし、学校としては今後もサポートしていきたいと考えています。

― 今井さんが大学に行ってから、田園調布学園での学びが活きたと思うことはありましたか。

今井さん 大学の授業でもグループディスカッションが多いんです。例えば治療について話し合って最終的な治療方針を1つ出さなければいけないとなった時に、話し合いがスムーズにいかなかったり、自分の意見だけを押し通してしまったりということがあるのですが、そこで司会的なまとめる役割を積極的に担ったり、抵抗なくグループディスカッションに入れたことは、中高の経験が大きかったと思います。

入先生 本校では、自分がどう表現するか、どう話を聞くかといった対話力が重要だと考えていて、ルーブリックにも出てきます。今井さんが在校生だった頃は学校としてそこまで打ち出してはいませんでしたが、軸はぶれていません。大学に行って活かしてくれているのは嬉しいですね。

\大学受験対策/ 授業だけでなく
受験対策の演習や補習も「楽しく」

― 実験や授業で理科の面白さを知る理科教育で、受験対策はどのように行われているのでしょうか。

入先生 高校2年生から理科はかなり授業時間が増えます。加えて演習と放課後や長期休暇には受験補習を行います。今井さんもこれらの演習や補習を受講していました。つまり授業は楽しくやりながら、補習はしっかりと受験対策を行います。ただし、演習や補習も「楽しくやれる」ことが大切で、まずは授業でそこに持っていけるかがポイントです。演習や補習を負担に感じてしまうと楽しくもないし、志望校対策にもならない。バランスを取りながら、受験に関してはかなりしっかりと対策をしていきます。

今井さん 私は受験対策として塾に行っていましたが、やっぱり受験勉強という肩肘張った感じがあり、受験に必要なことだけやらされて、問題・演習の繰り返しでした。ただ、物理は授業で受験勉強がほとんど終わっていたので、大学の過去問をやる程度でした。物理に不安要素はなく、他の科目に時間を使えて良かったです。

― 今井さんが中学3年生の時に医学部に進むことを決めたきっかけは何かあったのですか。

今井さん 中学3年生時の担任の先生に面談で「進路はどうするの?」と聞かれて、「責任が重い仕事は嫌です」と答えたんです。すると先生に「そんな仕事はお金がもらえないからこの世にはない。責任がない、人に影響を与えないような仕事はお金をもらってするようなことではない」と言われました。それでいろいろ考えて、責任がついてくるなら誰かと替えがきかない、この人にお願いしたいと言われる仕事に就きたいと思うようになり、何があるのかと考えたときに「医者になって自分の専門を極めていけば自分なりに頑張れるかもしれない」と考えました。

― 理系選択でもいろいろな進路があると思いますが、田園調布学園ではどういう進路選択をする方が増えているのでしょうか。

入先生 今年も、理系志望は多く、全体の約45%でした。近年は半数弱の生徒が理系を志望しています。その中でも最近は医療系が多く、医学部を志望する生徒も多くなっています。今井さんの頃から国立の医学部に入学する生徒も増えています。
在校中に職業に関する話に触れる機会も多いのですが、卒業生を囲む会や保護者の方に講演をしていただく場合も医療関係の方に来校していただくことも増えています。ただ、進路に関して最終的には本人が決めることなので、それに対して我々はダメとかやめたほうが良いとは言いません。本人が決めたなら、それをみんなで応援する、やることはやるように指導します。

\message/ 得意で頭一つ抜けるために努力!

― 大学受験や将来の目標に向かう後輩へアドバイスがあればお願いします。

今井さん よく受験は運だというようなことを言う人もいます。確かに自分の得意分野が出題されることはありますが、自分の得意分野には同じように得意な人がいっぱいいます。そこで自分が頭ひとつ抜けなければいけないと考えたら、やっぱり努力は必要ですよね。私も筑波大学の推薦入試の時に、他の教科に比べて物理が簡単だと感じたので、やっぱり勉強することは大切だと思います。

― 物理の勉強法についてもお願いできますか。

今井さん 自分で日常とのつながりを考えたり、映像教材をうまく活用してイメージをつかんだりすると良いと思います。私も受験勉強時に、NHKの講座をインターネットやテレビで録画してよく見ました。イメージや関連づけがうまくできることが大事な科目だと思います。

入先生 模範解答です(笑)。本当にイメージは大事ですから、「図を描くのが下手でも良いけれども、丁寧に描かない人はダメだ」と生徒に話しています。それがイメージする近道だと思います。難関大学になればなるほど物理の問題の文章は長い。しかし解説を見ると、たいしたことを言っていない場合が多いのです。問題文から素早くイメージして図を描けるように、普段からいろいろな現象をイメージするという癖をつけておくことの大切さは、現役生に対して大きなメッセージになると思います。

― 今井さんのような卒業生が出ている中で、田園調布学園の理科教育の今後についてのお考えを教えてください。

入先生 教育の軸はそんなに変わらないものだと思うので、我々はなるべくその科目の魅力を伝えていきたいです。最近は教科横断授業で各科目がつながっています。例えば物理の授業に数学の先生が来て、ある現象について「この見方だけではなく、別の見方もある」ということを教えています。そうした物事を多角的に見る力を授業の中で実践していくことを、本校では力を入れています。さらに、社会科と美術、音楽と理科など、様々な教科を横断によってつけられることにも力を入れていきたいと思います。

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