【清泉女学院中学高等学校】
探究心を育む第一歩 中学1年
My Story Project準備講座

Slider
清泉女学院中学高等学校では2021年度から学習体制を大きく変革、さらに充実させました。なかでも、土曜日に行うライフナビゲーションプログラム「My Story Project」は、中学3年間を通じて探究心を育む活動です。「My Story Project」のゴールは最終的に中学3年生で、興味・関心がある探究テーマを自身で見つけ、全員が自由な表現でプレゼンテーションすること。
今回ココロコミュでは、そのスタートである中学1年生の「My Story Project準備講座-問いを創る-」を取材しました。独自のプログラムから、未来を切り拓くために清泉女学院が伸ばす力と同校で学ぶ価値が見えてきます。
授業Report
My Story Project準備講座
① 問いを創る(質問づくり)
不思議のタネ 「日本海と同じ濃度の
食塩水をつくろう」
に対して問いを創る
previous arrow
next arrow
Slider
発想や視点の違いに気づき、面白さを感じる「問いのふせん」

清泉女学院の中学1年は全5クラス。カナ組の教室を訪れると、問い創りの授業のテーマとなる不思議のタネ「日本海と同じ濃度の食塩水をつくろう」が書かれた黒板を前に、生徒は10班に分かれて協働作業を行っていました。

今回の「問いを創る」授業のルールは4つ。①できるだけたくさんの問いを創る。②問いについて、すぐに話し合ったり、評価したり、答えたりしない。③人の発表は最後まで真剣に聴く。④意見や主張は疑問文に書き直す。

すでに各班の机上には、各自が考えた不思議のタネに対する“問い”のふせんが貼り出されています。単純な問い、複雑な問い、派生した問い、別角度からの問い…。問いを考え尽くすという慣れない行為によって、生徒は互いの発想や視点の違いに気づき、そこに面白さを感じている様子でした。

「どのくらいの量を作るの?」「どこの食塩を使うのだろう?」...
previous arrow
next arrow
Slider
相手を受け止め、自分を伝える協働作業

次に「閉じた質問」と「開いた質問」について、長所・短所を考察。まずは自身で、次に班で考えます。
グループワークは、作業時間に関係のないおしゃべりをしてしまったり、周囲と同じペースで書き進めることが難しく焦ったりしがちですが、清泉生は落ち着いてワークに集中。話し合いでは、うまく表現ができなくても最後まで自分の考えを伝え、互いに急かさず、途中で話を中断することなく、相手の話をしっかりと受け止めています。自分とは別の意見でも「そうか、そういう見方もあるね」「私もそこは気になった」と反応し、班としての答えを共に導き出していきました。その様子は、今日の講座のルールに従っているだけではなく、普段の清泉生の自然な姿なのだろうと感じました。

また、協働作業を進めていく生徒の様子を見ていて気付いたのは、ユニークな発案や意見をまとめるリーダー的な存在が随所にいること。先生に確認すると、AP入試(*1)で入学した生徒の活躍が目立つと教えてくれました。入学時に求められた能力が、こうした独自プログラムで活かされる機会を得て、今後も成長していくのでしょう。 *1 清泉女学院が2年前にスタートさせた思考力・表現力・総合力を測るAP入試=アカデミックポテンシャル入試

「My Story Project準備講座 -問いを創る-」は今年度からの新たな取り組みで、クラス担任の先生方で事前講習を開き、本日に臨んだといいます。生徒から意見が出るたびに、「なかなかいいね」「なるほど!」「違う意見が面白いよ」と肯定の声かけで反応する先生が多く、生徒が抵抗なく発言や発表ができているように感じました。生徒と先生の関係性が確立されていることも、このプロジェクトを可能にしている理由かもしれません。

previous arrow
next arrow
Slider
「My Story Project」につながる探究の起点

取り組みは同じでも、カナ組、ベトレヘム組、エルサレム組、ナザレト組、パレスチナ組の各クラスで進行や内容が少しずつ異なっていたことも注目点。最後には、とても知りたいと思う問いを3つに絞り、代表者による発表で盛り上がるクラス、落ち着いて静かに話し合うクラス、伝わりやすさを求めて黒板に記述してから発表するクラスなど、各クラスの特性が発揮されたまとめの時間になりました。

興味・関心を見付け、自由な表現で作品にまとめる「My Story Project」につながる中学1年の準備講座。今日の授業でテーマに対する問い創りを学び、生徒は探究の起点の見つけ方や流れを知ることができたでしょう。これが普段の教科授業や今後の探究活動に生かされ、中学3年の最後にはどのような「My Story Project」として発表してくれるのか。今から期待が膨らみます。

STUDENT VOICE
生徒アイコン話を広げると疑問は生まれ、掘り下げると面白さが見つかる!
知りたい問いを深めて絞る練習ができて良かったです。話を広げていくことで新たな疑問が生まれ、それを掘り下げると面白さが見つかることがわかったのは発見でした。
生徒アイコン意見を言う楽しさを知ることができた
普段は意見を言うことが得意ではないのですが、今日の授業で自分から意見を言えたことが嬉しく楽しかったので、これからチャレンジしていこうと思います。
生徒アイコン一人ひとりの考えは違うんだ
テーマに対していろんな問いや意見が出てきたので、「一人ひとり思うところが違うんだ」と改めて感じました。いつもの授業とは考えるポイントが違ったので、話し合いも盛り上がり、自分の中にあるいろいろな考えを伝えられました。
生徒アイコン楽しみな「My Story Project」への一歩
清泉女学院の受験前に、中3で「My Story Project」があることを親が教えてくれて、「こういう授業はめずらしいな。面白そう」と思ってこの学校を選びました。これまでは「どう取り組むのかな」と思っていましたが、今日の授業でどういう順序で論文を組み立てていくのかがわかり、3年生が楽しみになりました。
生徒アイコン当たり前に対して疑問をもつ面白さに気付いた
誰かが決めたことに従うのが当たり前だと思っていましたが、今日の授業でその当たり前に対して「どうして?」「なぜ?」と疑問をもつことができると知りました。そうやって考えることはとても楽しかったです。気づかなかったことにも気づけました。
生徒アイコン相手の話をしっかり聞く経験を生かしたい
いつもは人の話を聞くことが苦手なのですが、今日はルールがあったのでやってみると、相手の話をしっかり聞くことができました。今後もこの経験を生かして、意見を共有するときや日常会話で意識してみようと思います。
TEACHER INTERVIEW 自分を知り、考えるための道筋を学ぶ 中学3年間の探究活動
自分を探り、自分を知り、将来へ向けて準備する中学3年間

― 今日の取材では、生徒の授業中の落ち着きと休憩時間の元気良さの差に驚かされました。また、グループワークでは人への伝え方や聞く姿勢ができているように感じましたが、これは今年の中1生の特長なのでしょうか。

橘先生学年の個性もありますが、そもそも清泉女学院に入学してくる生徒が、穏やかで時にパワフルで、切り替えのできる子が多いと感じています。今年、私は初めて学年主任として中1と向き合うことになり、そうした新入生に先輩たちが培ってきた清泉女学院の空気をどのように伝えようかと考えて話をしてきました。
例えば2学期の初めに各クラスに回って話したのは、「ワクチンを打った、打たないをお互いに聞くのはやめよう」ということです。「プライバシーだから、お互いに聞かない。答えたくないなら答えなくていい。それを認め合い、理解し合おう」と言いました。他にも中1の集会のたびに、「お互いのことを尊敬し合おう」、「それぞれに意見があるのだからそれぞれの言葉を大切にして過ごしていこう」と話してきました。それらが生徒にうまく伝わって今日に至っていたら嬉しいですね。

― 今日は中3での「My Story Project」につながる準備講座でした。まずは「My Story Project」について教えてください。

芝﨑先生中高一貫の6年間における高校3年間はあまりにも短く、中学3年間で自分を探り、自分を知り、将来へ向けて準備する必要があると考えました。
そこで、これまで取り組んできた中3での論文を、ICTツールを活用しながら多くの人と意見交換して、中学3年間の探究活動の集大成として発表する「My Story Project」に進化させました。
「My Story Project」は、実は新しいものではなく本校独自の取り組みとして受け継がれてきたものです。このように私たちの改革は、まさに時代に合わせたリノベーションです。今まで散発的に行ってきた活動を「ライフナビゲーション」として系統立て、生徒も教員も目標が立てやすい形に塗り替えました。

― そのうえで、中1の準備講座が行われたわけですね。

橘先生芝﨑先生たちが、中3での「My Story Project」が十分な効果を得られるためにはどうしたら良いかを考えられていまして、そこに私が持っている知識やプログラム、研修してきた内容を反映させました。今日の素材にはルーツとなる書籍があり、そのエッセンスを使ってやり方を提示しています。中1はここから「My Story Project」が始まり、自分の生き方への問いが繰り返されていきます。

生徒のプラスサイクルになり
学習にも役立つ探究活動

― 中1の準備講座が「問いを創る」という内容だったのはなぜですか。

橘先生今日の授業での「不思議のタネ」のようなテーマをふまえて質問を創り、みんなの前で披露して、互いに認め合う関係性を作ることで、グループワークの方法を生徒は理解します。対立することもあるかもしれませんが、それを解決する方法を探れば、話しやすくなり、人間関係もできていきます。
また、これまでの中3での論文が壮大なテーマになりすぎる傾向があり、その改善方法として論文テーマに至るまでの考え方の道筋を作る授業が必要ではないかと思ったのです。先生から「これをやりなさい」と言われるのではなく、自分が問いを選び、自分が問いを作り出す経験を早いうちからやっておけば、探究活動だけでなく学習面などいろいろな場面でその経験を生かせます。
今日の授業を終えて、来週からの授業が楽しみで仕方がありません。各教科授業の中で生徒からこれまでにない受け答えが発生すればと期待しています。

芝﨑先生土曜日の探究活動は、生徒にとって「わからないけどおもしろい。わからなくていいんだ。もっとおもしろく考えよう」というプラスのサイクルになる活動だと思っています。「この探究活動が学習に役立つ」とも言い続けたいです。そして生徒が主体的に自分からやろうと思える時間になれば、土曜日の探究活動は成功です。

橘先生今日良かったのは、「学習に役立ちそう」という言葉が生徒から出てきたことです。あれもやってみたい、これもやってみたいとなるには、もう少し時間がかかるかもしれませんが、そのうち今日の食塩水を再現してみたいという生徒が出てきて、理科の先生が困るという場面を見たいですね(笑)。

― 中2の準備講座はどういう内容になりますか。

橘先生プレゼンテーションでの表現方法に取り組みます。

芝﨑先生小さなグループになり、スプレッドシートでデータ分析をしたり、スライドを作成したりして、その後にクラスで共有します。また、引用の仕方や著作権についてなどを準備講座では順序立てて行います。

中学で習得したことを高校で生かす
それが中高一貫教育の本質

― そして中3では、3学期に全員が「My Story Project」のプレゼンテーションを行うわけですね。

芝﨑先生思考力や表現力が求められる今、頭の中で考えたことをアウトプットすることが必要です。中3でのプレゼンテーションの機会が、学習にも応用されます。

橘先生現状でうまくいっているのが、論文のテーマを生徒同士で確認し、指摘し合える関係性ができていることです。2、3年後には、取り組みたいテーマや方法を聞いて、生徒同士が指摘やアドバイス、さらには「では、私はこういうことをやろう」と刺激を受けたり、「テーマを3つにわけて、私と他の子の3人で分けてやってみよう」と理想的な形で展開すれば、もっと充実するでしょう。

芝﨑先生女子は、協働作業において友達グループを形成しがちで、それは避けたいという思いがありました。その意味での今日の授業です。「この子と一緒にやりたいから、このプロジェクトをやる」ではなく、問題解決のためのグループを作ることを目的としました。教員からは心配の声も上がりましたが、問題解決を目指してクラスを超えるグループができる、そうした希望が生徒から出てくることなどを期待しています。
中3の発表方法も自由です。全教室にプロジェクターがあるので、特別教室で一人ひとりが発表することも可能ですし、動画も流せます。ポスターセッションでも、論文提出でも良いのです。

橘先生現高1生の中3時の発表では、傑作が生まれました。どんな発表方法でも良いといった結果、ジオラマ、曲、雑誌などを作って発表した生徒もいて、期待以上になりました。ただ、最後だけを見ると華々しいのですが、生徒はそれまでにかなりの調べ作業をしています。生徒によっては記録用紙がかなりの量になっていました。それらを経て、自分の作品を発表する、そのステップが良かったと思います。

previous arrow
next arrow
Slider
昨年度のライフナビゲーションプログラム「My Story Project」発表。

― 高校で「My Story Project」の経験をどのように活かしてもらいたいとお考えですか。

橘先生中学3年間で考えるための道筋を学べるのは確実なので、高校の進路選択では全く違う選択をするのも1つの道だと思います。中学でやったことを高校でもやらなければいけないとなると、主体的でなくなります。自分のテーマへの考える道筋を学んで生かすことが大切であり、中高一貫教育の本質はそこなのかもしれません。

芝﨑先生高校生になると興味関心や方向性が多岐に渡ってきます。企業が主催するプロジェクトに参加する人もいれば、大学の講義に関心を持つ人もいます。自分の学校以外の環境に挑戦する機会を増やしたいですね。それにはまず生徒の自己理解が必要なので、やはり中学での学びを大切にしたいと思います。

※当日の取り組みは、鹿嶋真弓、石黒康夫編著『問いを創る授業 子どものつぶやきから始める主体的で深い学び』(図書文化社、2018)を参考にしています。

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で